第13話 高い上にあんまり美味しくないって!
「きゃあああああああ!」
「うわああああああああ!」
前から聞こえてくる楽しそうな叫び声。
体が宙に浮いた様な感覚になり、視界が一気に下に引きずり下ろされ加速していく。
ゾクゾクと来る感じが癖になる。ジェットコースターは体感物凄く久しぶりに乗ったがやっぱり楽しいな。
―――
「はー……やっぱジェットコースターって楽しいわね」
「うん。最初ダッシュで行ったから待たずに済んで良かったしね」
やはり休日の、地方ではトップレベル、全国でも有名な遊園地。
開園して、フリーパスポートを誰よりも早く買い買い、入り口から1番近いドラゴンコースターに行くことで全く待たずに済んだ。
「最初の計画は完璧ね」
ドヤァ……と誇らしげに胸を張る光。可愛い。
「さすが光!」
パチパチパチと拍手しておく。
「なんか馬鹿にされてる気がする……次はこの先の天の川コースターよ!」
「了解」
「ほら、早く行くわよ!」
「はいはい」
光に手を引っ張られて、ついて行く。
―――
ムーンコースターは後ろ向きに立って乗るという、めちゃくちゃゾクゾクして楽しいジェットコースターだった。
次の目的地である仁王というジェットコースターに向かっていると、射的屋を見つけてしまった。
「光、射的だって」
「どうせフリーパスじゃできないんでしょ?」
「1回だけフリーパスで弾5発貰えるらしいよ。ほら、書いてる」
「ほんとだわ!ならやりましょ!」
「いらっしゃい」
「おばちゃん、フリーパスで」
「はいよ」
スタッフのおばちゃんがバーコードを読み取る機械で俺の手首に付けてあるフリーパスを読み取った。
「そっちの彼女さんも」
「は、はい」
「はい、じゃあ弾5発。景品狙って頑張ってね。後ろに倒れれば景品ゲットだよ。横に倒れても景品は貰えないから気をつけて」
「ふふっ、彼女さんだって……」
嬉しそうに呟いている光。
「……可愛い」
おばちゃんありがとう。
「コウ!」
「なに?」
「1つの景品を一緒に狙うわよ!」
「オッケーあ、ちょっと待って店員さんに同時狙いっていいのか聞くから」
店員に同時に1つの商品を狙っていいか聞くと、オッケーとの事だった。
「いいって」
「良かった。じゃあ……あの1番上にあるクマのぬいぐるみ狙うわ!」
「じゃあ光、一緒に右上狙って」
「分かったわ!」
「掛け声に合わせてね。いっせーのーせ!」
せ!のタイミングで2人同時にクマの頭の右上を狙って射撃する。
弾が同時に着弾し、見事にクマが頭から後ろに倒れていった。けっこう無理めだと思っていたのだが意外といけた。
「やったあ!」
嬉しそうに喜ぶ光。可愛いなぁ……弾外さなくて良かった。
「ぬいぐるみゲットおめでとうございます」
若いスタッフさんがぬいぐるみを渡してくれた。
「ありがとうございます。光いる?」
「いるわ!」
片手でぬいぐるみを抱きしめる光。
「残りの弾は適当にお菓子とか小さい景品狙おうか」
「いや!次はあの真ん中のPS4狙うわ!」
箱のゲーム機を指差す光。
「……あれって、よくある絶対倒れない感じのやつじゃないかな?」
明らかに台が他の景品より安定している。それに箱に入ったゲーム機をコルクの弾で落とすなんて不可能だろう。
「いや、いけるわ!」
「……じゃあ頑張るけど期待はしないでね?」
「また同時に狙うわよ!」
「了解」
―――
結果はダメだった。
「くっ……あんなの絶対無理じゃない」
「ね。ビクともしなかったね。でもぬいぐるみ取れたから良かったじゃん」
「それもそうね!ぬいぐるみ取れた時あっさり取れてビックリしたし……」
「前に誰かが狙ってたのかもね」
「このぬいぐるみ貰っていいのよね?」
「うん」
「大事にするわね!」
「うん」
喜ぶ光を見てると癒される。
「あ、光、そろそろお昼だけどご飯どうする?」
ムーンコースターの待ち時間が意外と長く、射的をしていたらいもうお昼時だった。
「……マックに行くわ」
何故か声のトーンが低くなった光。
「え?どしたの悲しそうな顔して」
「私だって、ここ限定のご飯とか食べてみたいと思ったわよ!でも、そのお店の口コミが……高い上にあんまり美味しくないって……!」
苦しそうに言う光。
「いや、マックでいいよ?」
「コウ、ごめんっ。でもいくら限定でも高い上にあんまり美味しくないご飯にお金を使いたくないっ!」
こういう所の限定がつく系の飯はあんまり美味しくないのに高いのはあるあるだと思う。
「でも、アイスは美味しいらしいからマック食べた後行きましょ」
「アイスは美味しいんだ……」
___
あまりイチャイチャ無くてごめんなさい!
10年前に戻ったので幼なじみを運命から救ってイチャイチャする アサブクロ @asobigoo
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