取って来い

塩塩塩

取って来い

 日曜の昼下がり、広い公園に人だかりが出来ていた。

 年齢こそバラバラだったが、それは全て同じ男だった。

 人だかりを掻き分けて、中から一人の男が現れた。

「これは全て忘れ去りたい過去の私なのです」

 男達は暗い顔をしてこちらを見た。


 そこに一匹の犬が新しい過去の男を連れて来た。

 嬉しそうな犬を見ながら、男は深い溜息をついた。

「投げたボールを取って来る様に、私の犬は投げ捨てたはずの過去の私を連れてくるのです」


 男の悲しそうな顔を見た犬は「ワン」とひと鳴きして駆け出した。

「嗚呼、もう勘弁してくれよ…」

 しばらくすると、犬は美女を連れて来た。


 男達の視線を一身に浴びながら、美女は言った。

「はじめまして、私は前世のあなたよ」

 男達は顔を見合わせ、初めて笑顔を見せた。

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取って来い 塩塩塩 @s-d-i-t

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