第2話

僕の名前は寺島康太……


あ、前回でも言ったか。


ということで、僕は


なんと


ポートマフィアに拉致されましたああ!!


……はぁ


全然嬉しくないよ。

だって武装探偵社とライバル的存在なんだよ?

しかも僕元々武装探偵社員だし。

ポートマフィアに勧誘(拉致)されても全然嬉しくない。

あー今すぐ死にたい。

なんで僕がこんな目に……


言いそびれていたが、僕の異能力は


“僕が認めた人物以外、動きが止まる”


というなんとも使いにくい異能だ。


これは戦闘向きとは言えど、僕は使えない。

何故なら僕は友達がいないのだから。

心を許した人は何人も居た。

だが、必ず待っているのは「裏切り」。


僕の異能を利用した裏切りだ。

僕はそれで人が傷つく様を何度も何度も見てきた。


──もう、貴方の異能力を他人に使わせないで────


彼女の言った言葉が蘇る。

結婚を誓った仲だったのだが、結婚式前夜、


事故で死んだ。


だから僕は異能に頼らず、人を助ける。

戦闘はしない。


そう心に決めた。


……そう思っていたら、拉致された。


どういう設定なのこれ!!

僕可哀想じゃない!?

前置きでずらーっと語らせて貰ったけども!!!


やっぱり僕可哀想じゃない!?


なんか怖そうな人いっぱいいるしさ!!

早くみんな助けに来てよ!!

僕死ぬよ!?


「ここが非常用階段。正面を突破された時に……って康太くん、聞いてるかい?」


「…………」


「おーい、こーたくーん。無視をするならァ……擽りの刑だっ!」


「ひゃっ!!ぎゃははっ!す、すみませっあはは!!ちょ、やめ、やめてくださいっくす、擽ったいですっ」


「やーっと反応したよ。君、ぼーっとしすぎ。そんなのじゃこの世界で生きてけないよ。」


「……いいんです。生きなくて。」


「……?」


「僕の異能力は

“僕が認めた人物以外の動きを止める”

……友達の居ない僕にはこの能力を操れない。居たとしても、僕は彼女と誓ったんだ。二度と異能力を使わないと。だからポートマフィアに来た意味がない。」


一瞬の沈黙で、太宰が口を開く。


「……君が武装探偵社で働いていた理由は?」


「人助けがしたかった。

……異能を使わないで、人を助けたかった。

武装探偵社なら、人を助けれる、そう思った。

だから入った。」


康太は、目から大きな粒を垂らしながらそう答えた。


「……君は、善人だ。

紛れもないね。

ただ、」


「ただ?」


康太は知りたい、という眼差しで太宰を見た。


「君は自分の事を嫌いすぎている。」


僕は何も言えなかった。本当の事だからだ。


──半年前────


「ねぇ、あずみ、結婚したらまずどこに行く?」


僕は浮かれながら彼女に尋ねた。


「うーん、折角なんだから、海外へ行きたいなぁ」


「じゃあ家に帰ったらまたゆっくり行先のこと話そうかっ!」


僕は浮かれてて何も気づかなかった。


僕が今渡っている歩道は───

赤信号だという事を。


「康太くん!!」


「え?」


彼女は僕を助けた。

それで車に轢かれて死んだ。


僕は救急車を呼ぶことしか出来なかった。




───現在─────


「着いたよ。ここが君の部屋だ。」


「……はい、ありがとうございます。」


「何か不便があったら言うように。それでは私は失礼するよ。」


そう言い残し、太宰は去った。


僕は布団に飛び込み、痛みを負いながら目を瞑った……



続く

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