後書
後書
後の顛末は端々に書いた通り、出禁を食らい会うことも許されず。義兄から内密にと入院の知らせを受けたが、見舞いにも行けず仕舞いだった。此も既出だが、寧ろ息子の仇とばかりに罵られる有り様。左頬の紅葉が薄れる迄、凡そ三日は掛かったのではなかったか。どうでも良い事ばかり妙に脳裏に焼き付いたものだ。
其れでも、彼を思えば何の事が有ろう。その無念の丈に比ぶれば、自身に降り掛かった彼是を艱難辛苦と称するのは烏滸がましいにも程がある。
斯様な思想に基づいた戒めとでも言うか、一事が万事彼に紐づけて自身の不幸を嘆く事を許さなかった。お前の背負う業がその程度の痛みで償えるのかと、自問自責を繰り返した。
生涯を其れに費やせば良いのだと気付いた頃年に漸く落ち着きを得、掛かる不幸を天与の物と有難がる心境に至れたのは僥倖だった。
悟りを開いて、悩みは晴れた。
それでも、行く道の見通しは酷く悪い。
『霧開けて、明暗』 2022/01/18 小島秋人
霧開けて、明暗 小島秋人 @KADMON
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