夢 ドッジボール

 鉈を片手に先生が「今日の体育はドッジボールです」と言うと、教室が歓声に沸く。

「それでボールは誰にしますか?」

「ハイ! 遠藤さんが言いと思います!」

 海山くんが真っ先に手を挙げて推薦するので、ボールは遠藤さんになった。先生が遠藤さんを首ちょんぱしてボールの完成だ。

 チーム分けをしてから遠藤さんの生首を持ってみんなで校庭に出る。

 遠藤さんは肩まで髪をのばしていたので投げる度に黒髪が蝙蝠のように広がり不規則な動きをするのでどうにもキャッチしづらい。ただその分球速も落ちるのでキャッチできないわけではない。簡単にキャッチできるだろうと油断するとやられやすい。

 やっぱり遠藤さんをボールにして正解だった。ありがとう、遠藤さん。今まで髪を伸ばしてくれていて。

 試合中盤に入ると海山くんが新たな投法を編み出した。長い髪を握ってぶんぶんと振り回し、遠心力で投げつけるのだ。この投法は普通に投げるよりも格段に球速が上がるため、コントロールに難はあるもののまともに飛んでくるとキャッチが難しい。

 遠心力投法でみるみるうちに両内野のメンバーが外野に回っていく。残るは私と海山くんだけだった。

「ふふふ、ここであったが百年目。ぺペロノネミスコタリア!」

 海山くんが叫びながら私に向かってボールを投げる。間違いなく今日一番の剛速球だ。私は避けることもキャッチすることもできず、ボールはそのまま私の顔面に衝突した。ぐわんぐわん世界が赤い。ああ、赤いのは遠藤さんの血液か。

「顔面セーフ! 大丈夫、続けられる?」

「はい、大丈夫です。やれます」

 先生に答え、ぐいと鼻を拭う。あ、これ遠藤さんの血だけじゃなくて鼻血出てるな。乙女に鼻血を出させるなぞ絶許ぜっゆるだ。私は激怒した。手榴弾の安全ピンをピンと外し、遠藤さんの口腔に詰める(手榴弾は乙女の嗜みだ。言うまでもない)。

「去ねや海山フォーエバー!」

 海山くんに全力投球。ボールは惜しくもキャッチされてしまったが、ここから本番だ。手榴弾が炸裂し、海山くんは遠藤さんの頭蓋と共にバラバラになった。やったぜ、悪は滅びた。

 ここでチャイムも鳴って体育の授業が終わる。次は家庭科で調理実習だ。

 ハンバーグのお肉には首ちょんぱされた遠藤さんとバラバラになった海山くんが使われるだろう。遠藤さんのお肉はやわらかそうなので楽しみだ。海山くんは不味そうなんでどうでもよかった。

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