緋蹟

安良巻祐介


 犀の眼をしたダランデルトーラ人はかつて人々の脳の岸辺に棲んでいたが、成長し高度な感情を覚えた人々によって初めて恐怖存在として捉えられ、手術で隔離されてやがて脳の外へと追いやられた。

 今の世に悪魔や夢魔、妖精として伝わっているものはみなダランデルトーラ人の皮膚の切れ端や指先、傷跡から零したはらわたなどに当たるものであり、画家という人種が狂気の獲得と引き換えに触れようとしたモチイフの源泉である。

 では、本体であるダランデルトーラ人は何処へ行ったのだろうか。

 宇宙の奥に入り込んでそこで目を開閉しながら永遠に巨大な呼吸をしているという話もあるが、いずれにせよ今の我々が直視していい存在では、もはやない。

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緋蹟 安良巻祐介 @aramaki88

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