第3話 未練
まぁ、なんだ…学校には行った。
授業に集中できたとかできなかったとかそういうのなしに、
学校には行った。
もしかしたら私の勘違いとかヤバイ幻とか頭バグったとかそっち系のものが無きにしもあらずだったから。だった、か…ら…
だったけど…!
「やっぱりいるッッッ!」
やっぱりいた。
「ゆずー!おかえりなさい~。もー!朝は私のこと無視したでしょ!
何かブツブツ呟いてそのまま出て行っちゃうんだもん!
結構感動的な感じのセリフだったと自負しておりましたのにー!!
ね!覚えてる?ただいま!あのただいまを!」
那菜ちゃんは、自室のドアを開けた瞬間待ってましたとばかりに飛び出してきた。
う、うーむ。本当にそのままだ…
いや、見た目は成長してるから違うけど、うん、変わり果ててるけど…
特に、胸が…飛び出してるけど…
「ん?どしたの?あれっ見えてない?私のこと!はえええ??」
おっといけない。胸を凝視しすぎてしまったようだ。
「いや、大丈夫。見えてる…けど、本当に、那菜ちゃんなの?」
念のため、確認してみる。
いまだに信じられないし、信じろっていわれても無理がある。
(那菜ちゃんじゃなかったら今すぐ通報しようと思う。)
「そうだよ?私は那菜だよ!ねぇ、ゆず。私は未練があるから戻ってきたの…
詳しくは、わからないけど。多分そう!幽霊ってそういうものでしょ?」
「うーん、まぁ、那菜ちゃんなのは、しっ、信じる…うん、信じた…!
で、でも、未練?結構適当な考えっぽいけど本当なの?」
「あったぼーよ!!未練に決まってるよ!!幽霊ってだいたいそれが原因でこっちに降りてきてるんでしょ?小学生の時一緒に見た恐怖映像百連発で霊媒師のおばさんが言ってたじゃん!そんなことより私が那菜だってこと信じてない感半端なくなかった?大丈夫?そっちのほうが心配なんだけど…ものっそい無理矢理この状況を飲み込んだよねさっき。え?え?」
ま、まさかの生前に見た自称霊媒師おばさんの言うことを頼りにした情報だったなんて…頼りない…(「え?え?さっきの結構引っかかってるんだけど私」)那菜ちゃんに呪われたりしないだろうか…(「大丈夫?通報されたりしない私?」)うぅむ。
「うーん、頼りないな、その情報…でも、その未練を叶えたとして那菜ちゃんに何が起こるの?やっぱり成仏?」
「ガビーン!信じてないね無視するということは!!!
あと、成仏されると思うよ!長期間ここにいたら悪霊化しちゃうとかじゃないかな!?」
涙目で返してきた。でも、そういうとこが好きだったのだ。変わってなくて嬉しい。
…でも、成仏かぁ。成仏しなきゃ悪霊化…それは嫌だ。うん。絶対嫌だ。
悪霊感満載のことをしている那菜ちゃんを想像して、そう思った。
「ね、成仏させるために私、なにができるかな?手伝うよ…」
やっぱり、那菜ちゃんは心からの笑顔が似合う。
那菜ちゃんは、顔をほころばせて
「うんっ!」
私の大好きな笑顔で返事するのだった。
そして、そのあと那菜ちゃんは赤面しながらうずくまり
「ああぁぁ、ゆずが手伝うって!あんな真剣な顔で!!はぅぅぅ!!かっかわっ、わいいかわいいかわいいかわいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
ブツブツ言っているのだった。(小声だったので聞こえなかった)
いつかの彼女 野崎太郎 @nozaki_nono
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