第2話 帰還

洗顔し、髪を乱雑に水で濡らす。

アイロンとか、昔はやってたっけ…なんて考えながら。

今は、水で濡らして整えるだけになっている。

洗面台の隅に置かれ、もう使わなくなったそれ一瞥し、まぁいいかと自己解決。自室の扉を開け、いつものように制服に着替えy…


「……え?」


何が起きているんだ…理解できない…

どええ、ん?えぇ?なっ…

私は、目の前にいる、いるはずのない、いてはいけないであろう存在の、私のベッドに座って足をプラプラさせている、その姿を見て、見て、しまった…!


「あれぇ~?ゆず~!久しぶりだね!?何年ぶり?2年?わーい!おっきくなったねー!え?え?何かないの!?何もないの!?はえー??」


彼女は、私を発見するや否や顔を覗き込んでいつもの、いや、2年前のおちゃめな調子そのままで話しかけてきた。

いや、まだ決まったわけではないのだが。

彼女が、そうなのだと決まったわけではないのだが。


何しろ彼女は2年前に消えているはずだから。

一生会えないはずなのだから。


…だが!似ている!なぜか成長しているが!似ている!

丸い、透き通ったキレイな瞳に明るい髪色。

ちょうどいい位置のツインテール。

甘ったるいアニメ声に気の抜けたしゃべり。

全部、全部全部、そのままだった。


そのままの、「那菜ちゃん」だった…


「あははっ覚えててくれてたのか。嬉しいよ…」

無意識で声に出ていたその名前に反応し、彼女はその懐かしい顔を緩めた。

そして、


「ただいまっ!」


目じりに溜まったほんの涙を弾けさせ、笑顔で彼女、いや、那菜ちゃんは

その一言を放った。


それはまるで、過去に戻ったような、でも何かふわふわした、久しぶりの、おそらくは幽霊との会話だった。




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