ぼくの秘密基地
ぱく知
バス
迷惑がからないように、声を荒げる事なく静かに泣きながらバス停で、次のバスがくるのを待っていた。パーカーの袖を使って涙を拭き、少し赤くなっ目に、熱くなった頬を手の甲で触って冷やした。
真冬というわけではないのに、今年の9月は以前よりも寒くなってきているような気がする。ひんやりとした手の甲とは打って変わって、熱かった顔も時間が経つにつれて、少し冷えてきた。少し寒いなと思い始めた所でバスがやってきた。
「A駅まで。」
バスに乗って行き先を告げると、
「はい、120円ね。」
と、バスの運転手は運賃を受け取り、出発進行という案内をバス内にアナウンスさせた。
自分が座るよりも前にバスが動き始め、体が少し後ろに揺らいだ。バスの速度が安定した所で、奥の方に進み、窓際の最後列の左側の座席に座った。
座って、窓の外をぼーっと見ながら、一息つくと、頭の中も少し落ち着いてきたのか、先程のことについて考え始めていた。
いつも、そうなのだがバス停のところにいるまでは、
「何でだよ」「意味分かんない」「ムカつく」 と一人で愚痴を言いながらカッカしている時の頭は、バスに乗ると途端にクリアーになっていく。
両親と、といっても基本的には母親と、喧嘩した時は決まって、このバスと電車を使ってお婆ちゃん家に行くのであった。
1時間位で行ける距離のお婆ちゃん家は、いわば、ぼくにとっての緊急避難場所のようなものであった。
お婆ちゃんとお爺ちゃんは、いつ押しかけて行こうが、何も聞かずに、一緒にご飯を食べて、テレビを見て、楽しく過ごさせてくれた。
ただ、家に帰る間際には決まって、
「いつでも来ていいからね。」
とだけ言って駅まで見送ってくれていた。
お爺ちゃんとお婆ちゃんは、自分にとってのメシアと言っても過言では無いくらいのありがたい存在だった。
今回でもう、何回目のプチ家出になるのか分からないくらい行ったり来たりを繰り返している。
母親との喧嘩といっても、些細なことから大きな事まで沢山あるが、根本的に自分が必ず正しいのだと信じてやまない母親であるが故に生じる衝突がほとんどを占めているだろう。
これから先も、何度も行くのだと思う。そして、変わらず出迎えてくれるであろう祖父母。
孫が出来たら、自分もこんな年寄りでいたいなあ、なんてことを考え、バスを降りた。
ぼくの秘密基地 ぱく知 @Reeeeet
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ぼくの秘密基地の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます