最終回〜あのコとこれから先も〜

「カケル明日の放課後空いてる?」

「空いてるよ」

「もうすぐ期末テストじゃん?だから、一緒に勉強しない?赤点取ったらクリスマスどころじゃなくなるし」

「確かにそうだね。1人じゃ勉強する気にならないし。分からないとこ教えてほしいな」

「決まり。じゃあ明日残って教室でやろう」



※※



 翌日の放課後。2人で勉強していると、如月たちもやってきた。

「俺たちも一緒にいい?」

「いいよー。先生が増えて嬉しいし」

「俺の授業は高いぞカケル!!」

 彼はメガネをかけて一気に集中モードに入る。

「とりあえず、理系は俺。文系は木内さんに訊いてくれ」

「ああ……私、両方の先生に訊かないとだ」

 梨花さんがこの世の終わりみたいな表情をしていると、如月が頭を撫でながら言った。

「大丈夫だよ梨花。俺がしっかり教えるから」

「うん、よろしくね♪」

 4人での勉強会はとても有意義なものだった。おかげで分からないところもなくなったし、あとは自力で頑張れそうだ。帰宅して勉強をしていると、母親ババアがおやつを持って部屋にやってきた。そして俺が机で勉強している姿を見て、ひどく驚いていた。

「どうしたのカケル!?熱でもあるんじゃ……」

「……うるせーな。早く出ていけよ」

「ごめんごめん。ここにケーキと紅茶置いとくから、合間に食べてね」

「ああ」

 テキストに目を向けたまま返事をする。無理矢理塾に行かされたときから苦手なんだよな……。一時間くらい勉強して、ひと息つこうとした矢先、茜からRineがきた。

『やっほー!!クリスマスなんだけど、行きたいところお互い考えておいてテスト終わったら決めようねー♪』

『了解』

 茜と過ごす初めてのクリスマスだから、絶対赤点取らないようにしなきゃ。夕飯を終えた後、今までにないほどの気合いを入れて勉強に励んだ。こんなに勉強したのは塾に通っていたとき以来だ。昔はめちゃくちゃ苦痛だったけど今は楽しい。そう思えたのも彼女のおかげだ。



※※



 テスト期間が始まり、茜と毎日勉強してから帰宅する日々が続いた。

「今のところ大丈夫そうだね」

「うん、茜のおかげだよ」

「お礼なら赤点免れてからね」

「分かった」

 こうして三日間のテスト期間を乗り越えた。翌日、続々とテストが返却されおかげさまで全教科赤点を免れた。茜に報告すると、ハイタッチで喜んだ。

「本当良かった〜!!よく頑張ったね」

「ありがとう!!茜のおかげだよ」

「カケルが頑張ったからだよ。それじゃあ放課後、この前話したクリスマスのプラン決めようか」

「ああ」

 今まで家族とテキトーに過ごしていたから、何をすればいいのか分からないや。とりあえず、いろいろググってみよう。イルミネーションもいいな。軽く調べていくうち、やりたいことがどんどん見つかり楽しくなってきた。喉が渇いたのでジュースを買いに茜と廊下に出ると「茜!!」と声をかけられた。振り返ると、そこにいたのは桜木だった。ヤツの姿を見た茜は踵を返して教室へ戻った。俺は睨みつけながら「……何の用だよ?」と訊いた。警戒していると、ヤツはニッと笑って言った。

「そう構えるなって。もう何かしたりしねえよ。お前らを敵に回すと怖えからな。ただ、礼を言いたかったんだ」

「礼?」

「あのとき動画上げたとか言ってたけどさ、実際は上がってなかった」

「当たり前だろ。そんなことしたらお前と同じになるじゃん。それは絶対嫌だったから、如月が機転を利かして上げたフリをしただけだ。だから礼を言うなら如月に言えよ」

「分かったよ。それから茜にさ今まで辛い思いをさせて本当に悪かったって伝えてくれるか?」

「……言いたいことはそれだけか?もうお前とは関わりたくないから、さっさと消えてくれ」

 そう吐き捨てると、ヤツは教室へ戻っていった。謝罪があったことを伝えると「謝れるんだ……」と感心していた。



※※



 放課後になり、茜といつものファーストフード店へ向かった。店内は学生で賑わっている。

「俺2人分買ってくるから、場所取りよろしく」

「分かった」

「何がいい?」

「お腹空いたからポテトのLサイズとコーラがいい」

「俺も同じサイズにしようかな。じゃあ待ってて」

 2人分買って席に戻る。そして食べながら作戦会議をしていると声をかけられた。

「あれ?茜ちゃんと梶原くんだ」

 声の主は梨花さんだった。奇遇だな。

「何してるの?」

「クリスマスのプランを決めているところだよ」

「そうなんだ〜。偶然だね。私たちもだよ」

「2人はどこで過ごすの?」

「私たちはね、読み買い遊園地のイルミネーションを観に行く予定だよ」

 それだけ言って席へ戻っていった。

「遊園地もいいね」

「うーん、それもいいんだけど俺たちはやっぱりあそこがいいんじゃないか?」

「もしかして……東京スカイタワー?」

「うん。調べたらイルミネーションとかプロジェクションマッピングのイベントあるみたいだし。その後、レストランでクリスマスメニューを食べよう」

 スマホを見せながら説明すると、彼女の目がキラキラと輝いていた。

「ステキ♪今から楽しみだなぁ」

「もちろんプレゼント交換もするよね?」

「するよ!!でも、初めて女の子にプレゼント贈るから期待しないでね?」

「大丈夫だよ。実はあたしも初めてだから」

 2人で笑い合う。今日の帰りにプレゼント買って帰ろう。何がいいかな。



※※



 クリスマス当日。彼女の最寄り駅で待ち合わせして現地へ向かった。クリスマス限定のイルミネーションがとても綺麗だ。

「クリスマスはこんなに景色が違うんだね♪来て良かった〜」

「本当だな」

 彼女のテンションは最高潮に達していた。そして、久しぶりに頂上へやってきた。以前よりも景色の見え方が違った。

「あのときは景色を楽しむ余裕がなかったからな」

「ふーん、そうだったんだ〜」

 ニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる。

「そうだよ!!またフラれたらどうしようって、そんなことばかり考えていたんだからな!!」

「……でもさ、今こうして一緒にいられるんだからいいじゃない」

「そうだな」

 プロジェクションマッピングのイベントを楽しんだ後、予約したレストランへ向かった。

 案内された席はなんと景色を一望できる場所だった。

「わあ〜良い眺め♪」

「本当だね」

 景色を楽しんでいると、コースメニューが順番に運ばれてきた。そしてメインを食べ終えた後、プレゼント交換の時間になった。

「じゃあ、あたしから先に」

 正方形の箱を2つ渡されて開けてみると、青いマグカップとハーブティーが入っていた。

「それ、あたしと色違いなんだ〜」

 そう言って写真を見せてくれた。茜と同じカップなんてめちゃくちゃ嬉しい♪

「ありがとう。大事に使うね」

 俺の番になり、少し大きめの袋を渡した。何だろうと言いながら開けていた。そして中身を見て驚いていた。

「えっ!?」

 俺があげたプレゼントは花柄のブランケットだ。

「教室寒くて買おうと思ってずっと忘れていたから、めちゃくちゃ嬉しい♪早速使うね」

「うん」

「本当サイコーのクリスマスだわ。毎年やろうね」

「うん」

 食後のデザートを食べて時計を見る。

「そろそろ花火の時間だよ。行こうか」

「分かった」

 会計を済ませて再び展望エリアへ戻った。花火を心待ちにしている彼女の横顔が愛おしい。あの日、茜と出会わなかったら高校生活は、きっと今みたいに楽しくはなかっただろう。彼女の存在が今の俺を変えてくれたんだ。

「茜。こんな俺と付き合ってくれてありがとう。ずっと大切にするから、これからも俺の隣にいてください」

「なんだかプロポーズみたい」

「感謝の意味だったんだけど。じゃあ予行演習ってことで!!」

 彼女は手を繋いで俺の唇に触れるようなキスをした。

「ごめん。我慢できなくなっちゃった♪」

 舌をちろっと見せて、いたずらをした子どものような表情を見せた。

「……そういうのって男からするんだろう?」

 些細な疑問をぶつけると「その考え古いよ。いつの人よ」と笑われた。そういうものなのか?それとも茜が積極的なだけ?ええい、細かいこと考えるのはやめだ。俺はこの先、茜が泣くような思いをさせないように守っていくと決めた。

「茜、これからもよろしくな」

「うん、こちらこそ♪」

 打ち上がる花火がまるで俺たちを祝福しているように感じた。



ー終わりー















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あのコを振り向かせたいんです!! ゆずか @mimie1118

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