第8話〜あのコを振り向かせたいんです〜

 今度こそちゃんと告白するんだ!!前みたいな数撃ち作戦ではなく、今の自分の素直な気持ちをぶつけるんだ。告白すると決めてから、頭の中がそのことでいっぱいだった。



※※



 昼ご飯を終えた後、建物内にある水族館に行った。そして、だんだん日が沈んでいき、徐々に街の灯りが顔を出す。そろそろだ……。時間が迫ってくるうち、だんだん手に汗が噴き出てくるのが分かる。茜もそろそろ夜景を見に行こうと誘ってくる。パワースポットに力をもらう為、売店で家族へお土産を買うと偽り、恋愛成就のストラップをこっそり買った。よし、これで準備は万端だ。


 夜になると、昼間とはまた違う顔を見せた。灯りがまるで蛍の光のように美しい。それを見にカップルも増え、デートスポットと化す。周りの人から見たら、俺らもカップルに見えるのかな……。

「あたし夜の景色初めて!!めっちゃ綺麗だね〜〜」

 景色を眺める横顔がとてもきれいだった。彼女をずっと守っていきたい。俺なんかじゃ頼りないかもしれないけれど、でも他のヤツには渡したくない!!

「大事な話があるんだけど……」

 彼女の目を見ながら切り出す。そして彼女も俺の顔をじっと見つめている。勇気を振り絞って素直な気持ちをぶつけた。

「振られ続けたあの時から、この気持ちを忘れようとしたんだ。でもやっぱり無理だった……。茜のことを知れば知るほど、想いが募ってきてさ。もう止めることができないくらい好きなんだ。それに、また一緒にこの景色を眺めに来たいし。だから……その俺と……付き合ってくだしゃい!!」

 とうとう言ってしまった。もう後戻りもできない。でも言わずに後悔するよりもずっと良い!!あとは、どんな結果であれ真摯に受け止めるつもりだ。

 すると、茜が突然笑い出した。俺は驚いて何かおかしいところがあったか彼女に訊いてみる。

「ごめんごめん。だって、こんなステキな告白なのに最後噛むんだもん!!なんかカケルらしくていいなって」

 無我夢中だったから、気付かなかった!!なんで俺って緊張するとこうなるんだろうか……。カッコよく決めたかったのに。

「カケルの気持ちちゃんと届いたよ。それに前みたいに、ただ『好き』って言われるよりも、今日みたいに誠実に気持ちを伝えてくれる方が、よっぽど嬉しいよ!!」

 落ち込んでいる俺に笑顔を向けながら、そう言ってくれた。それから俺の手を掴む。彼女ははにかみながら返事をする。

「ありがとうカケル。これからもあたしと一緒にいてください!!」

 その直後、遠くから光っているのが見えた。どうやらちょうどテーマパークの花火が上がった様子。タイミング良すぎだろ……。張り詰めた緊張から解放されて、気付いたら涙が出ていた。

「やだな、なんで泣いてんの?」

「またダメだったら、どうしようってずっと思ったから……。まさかオッケーしてくれるなんて、夢でも見てるのかなって……」

 不意打ちで頬にキスされた。今のは一体……。まさかこれも夢か?なんて考えていたとき、茜が笑顔で言った。

「これで現実だって分かった?」

「うん……」

 泣きながら返事をする俺……めちゃくちゃカッコ悪い。

「もう泣かないの。あたしも貰い泣きしちゃう……」

 そう言いながら、だんだん声が震えている。顔が見えないように、彼女の身体を優しく抱きしめた。今日は俺たちの中でも、一生忘れない思い出となった。



※※



 花火が終わり東京スカイタワーを後にした。そして、彼女を最寄り駅へ送り届けた後、半日ぶりにスマホを開いた。すると、如月から大量のメッセージがきていた。結構気にしてくれていたんだな。あとでしっかりと、今日の出来事を報告しなきゃ。

 家に着くなり如月に電話をかける。

「よぉ、如月。今大丈夫か?」

「いいよ。で?どうだった?告ったか?」

「ああ」

「それで!?やっぱりフラれたか!?」

 こんなときでもブラックジョークをかましてくる。

「その反対だよ。付き合うことになった!!」

「マジかよ!?すげーじゃん!!」

 電話越しでもかなり喜んでくれているのが分かる。

「本当ありがとうな。お前のおかげだよ」

「いやいや、そこはお前が頑張ったからだろ。月曜から勉強も精を入れなきゃな!!みんなで進級しようぜ」

「ああ!!」

 如月との通話を終えた後、メッセージのヘッダーが出てきた。開けてみると、茜から『今日はありがとう!!これから宜しくね。彼氏くん』だって!!可愛い過ぎだろーーと叫びたくなったが我慢した。彼女っていいな。



※※



 月曜日になり、頭の中がお花畑状態で学校に行った。しかし、学校ではどう振る舞うのが良いんだろうか?如月たちは特別イチャイチャしていない。それにあまり目立ちたくないらしい。おそらく茜も同じ気持ちだろうから、俺もそうしよう。

 学校の最寄り駅から、いろいろ考えながら歩いていると、背後から「おはよう!!」と茜の明るい声が響き、思わずビクッとしてしまった。

「おい茜!!驚かすなよ。寿命が縮まるかと思ったわ!!」

「そのくらいで縮むなんて情けない心臓ね〜〜」

「なんだってーー!!」

 言い合っているときに「お熱いですね〜〜お2人さん」と、如月カップルがニヤニヤしながらからかってきた。

「イチャつくなら、人目のつかない所でやりなさいよね〜〜」

 やり取りを見られて少し恥ずかしくなった。良かった、お互いに通常運転だ。恥ずかしくて最初はてっきり気まずくなると思ったから。

 俺らはとりわけ周囲に交際宣言をするつもりはなく、これまで通りお互い接していた。唯一変わったところは放課後、一緒に帰ることだ。帰り途中、もうすぐクリスマスというビッグイベントを思い出した。

「もうすぐクリスマスだろ?いつもどうしてた?」

 さりげなく過ごし方を訊いてみた。すると、俺の予想を遥かに上回っていた。

「家族で高級レストランで食事してるよ~。うち、クリスマスと誕生日は豪勢なんだ」

 プランを聴いて思わず腰が引けてしまった。

「そ……そうなんだ。すごいね。うちは家でローストチキンやケーキを食べるくらいかな。それから家族とプレゼント交換してる」

「プレゼント交換!?やりたい!!」

「じゃあさ、今年から高級レストランじゃなくていい?」

 誘うだけでかなり緊張する。彼女は満面の笑顔で返してくれた。

「うん。今年からはカケルと過ごしたい!!」

「じゃあ決まり。今から楽しみだなぁ」



続く。







 

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