第10話 スーパーヒーロー

「う、うん…?」


目を覚ますと私は知らない場所にいました。コンテナなどが置いてあることなどから考えると倉庫でしょうか。でもなんでこんなところに…?体を動かそうとしましたがうまく動かせません。後ろ手で倉庫の柱に縛り付けられているようです。

意識が覚醒してきた私は何があったかを思い出してきました。そうです、夕也くんといっしょに家に帰るところでした。夕也くんに感謝を伝えている途中で突然車に引きずり込まれて…。


「ヒヒッ、お目覚めですかいお嬢様。」


声をかけられ顔を上げるとそこにはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべてこちらを見る小柄な男がいました。少し離れたところには仲間と思われる人も立っています。


「な、なんで私を攫ったんですか。」


恐怖で震えそうになる声を隠すために思わず声が固くなります。


「なんでって、特に無いよ。理由なんて。ただ誰か攫って楽しもうと思ってたらちょうどいいとこにいたのが君だったってだけ。」


「え…?」


想像もしていなかった答えに理解が追いつきませんでした。理由が特に無いって、誰でも良かったってことですか…?私は本当にたまたま連れ去られて…?


気が遠くなりそうです。

思えば昔からツイてないことばかりでした。

守護霊がいないというのが原因なのでしょう。

しっかりとした説明は夕也くんから聞いて初めて知りましたが、昔から周りの人には他にも人や動物など何かがいるのに、私だけ何もいないということ。それだけはわかっていました。


今までは命に関わるレベルの問題は起きていませんでした。攫われてしまうなんてことも今回が初めてです。初めてで理解しきれていないからまだ落ち着けているんだと思います。助けてもらおうにも私自身もここがどこだかわかりませんし、誰かに連絡を取ることもできません。


高校生になって、クラスの雰囲気も良くて過ごしやすくて、そして何より夕也くんと出会えてこれから楽しいことがいっぱいだと思ったのに…。

なんでこんなことになってしまうんでしょうか。

気持ちの沈みきった私を嘲笑うかのように男が声をかけてきます。


「誰も助けになんて来れないだろうからねぇ。 可哀想だけど逃げようなんて思わないでねぇ。 ウヒヒッ!」


可哀想なんて思ってないくせに。


ゲラゲラと笑いながら私の体を品定めするように見てくる男たち。そのうちの一人が興奮した様子で近づいてきます。


「なぁ、俺もう我慢できねぇよ。こいつで遊んじまっていいよな!?」


いや、怖い、来ないで。やだ、抵抗しなきゃ。


頭ではわかっていても、腕が縛られていることと、下手に暴れたら何をされるかわからないといった恐怖で体が動かせません。

男がもう目の前まで来て私に向かって腕を伸ばしています。


「いや…だれか助けて…!」


「誰も助けになんか来ねぇよ!」


「夕也くん…!」


現実から少しでも逃げるために目をつぶり助けを求める私の脳裏に浮かんだのは優しい彼の姿でした。




ドガァァァン!!! ドガァァァン!!!




突然倉庫に轟音が響き渡ります。倉庫の入口の方からでしょうか。私の体に今や触れようかというところであった男も思わず手を止めて入口の方を注視しています。よく見ると倉庫の大きな扉が轟音に合わせて震えています。まるで何かに叩かれて揺れているような…。彼の仲間たちも何事かと落ち着かない様子です。


「おい、ちょっと見てこい!」


「へ、へい!」


指示された男が異常を確認しに入口へと向かいました。そしてスライド式の扉へ手をかけて少し開き、外の様子を伺おうとしたその瞬間でした。突如隙間から伸びてきた手が男の頭を鷲掴みにしました。掴まれた男は咄嗟に扉を閉めようとしますが頭を引っ張られて扉に叩きつけられ一発で気絶してしまいました。


見えるすべてがスローモーションのように流れていく中で、倒れ込む男の先、扉を開けて現れたのは、私のスーパーヒーローでした。



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となりのあの子はツイてない! ふじお @fujio1012

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