輝く花 4
遠くから聞こえてくる鳴き声や羽音の音をたよりにワイバーンを探すこと数分。
今では木々の間から赤い巨体が覗き見えるまでに接近していた。
……やっぱり、尻尾がないこと以外は前に会ったヤツと同じっぽいね。
ってことは、強さなんかも変わらないだろうなぁ……よし、アレには全然興味ないけど、ニコラやフローラがどうするか眺めてよーっと。
あ。それと補足情報だけど、途中から人間の声や鋭い金属音なんかも聞こえてきてるよ。
つまり、どういうことかというと……
「だれか戦ってるの? ……ニコちゃん、ここから参加しても報酬ってもらえる?」
「協力して倒したのなら折半になるんだが、どうだろうな……。
まず、普通に戦って勝てる相手じゃない――って、アイツらなのかよっ」
ワイバーンと戦闘中の人達が誰であるか認識した二コラが驚いている。
それは彼女の知り合いだったからであり、僕にも見覚えのある冒険者達だった。
「どうしてっ、どうしてなのよっ!? 突然ワイバーンが襲ってくるなんて聞いてないわよ!!
ふ、二人とも守ってっ! 守ってよっ!?」
「も、もちろんだぜリーゼちゃん!! ――おいっ、カール! なんとかしろよ!?」
「なんとかって言ってもどうしたらいいんだよっ!? こんなのが相手じゃあっ、どうにも出来ないよ!!」
ギルドでも何回か会ったことがあるリーゼと…………その他数名のパーティだね。
リーゼは可愛らしい手にクロスボウを持ってて、その前にいる男二人は剣を握ってるから剣士なのかな?
この前は猪から逃げてただけだったけど、今回も"戦っている"というよりは"怯えている"が正しい気がするね。
このままいくと、数分後にはただのエサになってるんだろうなぁ。
「よく見たら、戦ってるのリーゼさん達だね」
「あぁ……みたい、だな。…………クソっ、運のないヤツらだ……っ」
二コラは吐き捨てるように呟いただけで、それ以上のアクションはないみたいだ。
なるほど。ワイバーンは強敵だって言ってたのは、ちゃんと本心だったんだね。
――だからこそ、気軽に助けに行くことは出来ないと。
それじゃあ、今回は見てるだけってことで……
「えっ、二人はあの人たち知ってるの? じゃあ、すぐに助けないと!」
「お、おいっ!? だから勝手に動くなって!!」
と思ってたら、フローラによる強制行動が発動したよ。
二コラが止めても聞く気はないみたいだし……熊相手に漏らしちゃったのに頑張るねぇ。
で、ワイバーンに向けて手を突き出した彼女は、魔法を構築し始めた。
数秒の間があって、魔法陣が出現し――あー、魔法はアレを使うのね。
ん? 何の魔法かって?
ほら、昨日も使ってた水魔法のヤツだよ。
「ブ、ブレス!? ……も、もう私がやるしかないのっ??」
おっと。フローラが魔法を準備してる間に、ワイバーンの方針が"ブレスで焼き尽くす"に変わったみたいだ。
息を大きく吸い込む動作を見せたワイバーンの口からはチョロチョロと火が漏れており、親切にもそれがファイアブレスの準備モーションであると教えてくれている。
「ここから外すわけないわっ! ――んっ!!」
「<ウォーターボール>!!」
その事に気付いたらしいリーゼは装填済みだった矢をワイバーンの頭部に放ち、偶然にも同タイミングでフローラの水魔法も発動する。
「GAWO――ッ!」
……が、ワイバーンは横に跳ぶことで矢を
唯一の成果は、あっちの攻撃をキャンセルできたことくらいかな。
それにしても、避けられたとはいえクロスボウって狙った通りに飛ぶものだね。
カルラだったら、きっと目標まで届かないようなヘロヘロの矢を放ってたんだろうな~。
あれって、飛ばす仕組みに個人の能力はあんまり関係しないだろうし、カルラもあれを使った方がいいかもね、ふふふ。
「うぇーん、はずしちゃったぁぁ」
「GUUUWAAAAAAAAAAッ!!」
「「っ!?」」
さて、こっちに気付いたみたいだから本格的に戦闘開始ってことだね。
といっても、威嚇されただけで二人とも震えてるんだから、先が見えてる気もするけど……ま、なるようにしかならないか~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます