輝く花 3
「ねーどこまでいくのー? そろそろ教えてよー、ニコちゃんってばぁー」
「ん? んーー、いや。もうちょっとしたら話すわ。
ま、行けばわかんだから、あんま心配すんなって」
翌日。僕達『雷槌』の三人は、近隣にある山の山道を歩いていた。
目的地は……説明したくてもフローラと僕は教えてもらえてないから、何も言えないね。
二コラが先導するままに付いて行くだけだよ。
でもなんかこの道、見覚えがあるような気が……って、そうだよここ。
何日か前にも来たことあったよ。確かあの時は、ハーピーに追いかけられて大変だったなぁ。
「むぅぅぅ、意地悪ニコちゃん……。
あーあ。わたし、足いたくなってきちゃったなー。教えてくれないんじゃあ、もう歩けないなぁー」
「え、大丈夫? <ヒール>、とりあえず回復魔法使ってみたけど、どうかな?
痛みと、それから疲労も回復するはずなんだけど……」
明らかにフローラの機嫌が傾き始めた事を察知したので、即座に回復魔法を飛ばしておいた。
二コラは素っ気ないところがあるからね。フローラのサポートくらいはしてあげようかな。
「……っ! すごいっ、疲れが消えちゃったみたい!
これならどこまでも歩けるね、アーちゃ……じゃないのっ! そうじゃなくて――」
「GAAWOOOOOOOOOOOO」
何かが気に入らなかったのか、喚き出したフローラの話を聞いていたら謎の
咄嗟に頭へ浮かんで来たのは昨日の熊――だったけど、記憶の中のそれと比べてしまえば迫力が明らかに違っている。
「ぁぅっ!? ね、ねえっ、みてみてっ!? アレなに!!?」
「う、そだろ……?」
頭上を確認した二人が驚きのあまり絶句してる。
確かに、空を舞うそれはあまりに大きく、影なんて僕達三人を包み込んでもまだ余り有る程だ。
……これくらい勿体ぶればいいかな? ま、いいよね。
いやぁ、実は大したものじゃないから、サラっと言うけど――
「ああうん、ワイバーンね。流石に飛ぶのは速いよね、もう行っちゃったよ」
「……気づかれなかったな。ふぅ、命拾いしたぁ」
「いまのがワイバーンなの……? 尻尾、なかった……」
「ん? 尻尾? あー、言われてみればそうだね。
尻尾生えてなかったかも。どこかに落として来ちゃったのかな?」
ノラ達と出会ったワイバーンには、長いのが生えてたしね。
武器みたいに使ってたの何となく覚えてるよ。
もしかして、着脱式だったりする?
「おい、まさかワイバーンと戦おうなんて考えてるわけ――」
「まてーっ、金貨ひゃくまーいっ! わたしの魔法でたおしちゃうんだからぁ!!」
「ちょっ、マッ!? フローラこそ、待てって!!
……ほ、本気かよ」
そういえば、ギルドに貼ってあった依頼に、報酬は金貨百枚って書いてあったね。
ふーん、フローラもアレを見てたのか。
まだこの世界の金銭感覚がフワッとしてる僕でも、それが結構な額だってのは何となく分かるし、彼女が狙いたくなっちゃう気持ちも頷けるよ。
「アイリスっ! あいつを一人にするわけにはいかないし、早く追いかけるぞ!!」
「うん、それはもちろん。
でも、その後は? ワイバーン探しを一緒にして、戦うの?」
「ぅっ、それは……状況次第だが、必要ならたたか――いや、戦闘は絶対に避けるぞ。完全に無謀だからな。
はぁ、だけどあいつ。一度決めると聞かないからなぁ……強引に止めさせようとしたら、一人で探すとか言い出しかねないし。
とりあえず、もっと近くからアレを見せて、怖さを分からせるしかないだろ」
なるほどね。二コラとしては"戦闘"は選択肢にもないと。
――ま、仕方ないね。
ノラ達も簡単に壊滅したくらいだから、強敵っていうのが一般的な認識になってるんだろうね。
僕達みたいな低ランクの冒険者が戦うのは、きっと自殺行為に等しいのかな。
***
その後、尻尾のないワイバーンを見て一人駆けだしたフローラには、あっさりと追いつくことが出来た。
というより、すぐにバテちゃったみたいで、今は僕が手を引いて歩いてるくらいだよ。
「うぅぅぅ……ワイバーンさん、どこまでいっちゃったの?
はやいよぉ、もどってきてよぉ……」
「うんうん、そうだよね? 勝手に飛んでったワイバーンが全部悪いよ、フローラは何も悪くない。
――ってことで。そろそろ回復魔法使ってもいいと思うんだけどー……ど、どうかな?」
そしてなぜ彼女に魔法を使ってないかといえば、二コラから「体力がもどったら、また一人で突っ走るからダメだ」と言われてしまったからだ。
意外と厳しいよね。もっと素直になって、甘々にしてもいいんだよ?
「ああ回復させていいぞ。それと――こっからは静かに。
かすかにだが、羽音と鳴き声が聞こえる……かなり近づいてるな」
えーと、生命反応の位置も彼女が真剣に見つめる先と一致するね。
それじゃあ、ほぼ発見出来たみたいだから、二コラのナビに従えば大丈夫かな。
「はい了解、からの<ヒール>っと」
「――~~っ、アーちゃんありがと~! ……あ、静かにしないとだった。
(じゃあ、こうやって小さな声で話すようにしようねアーちゃん)」
「っっ! (だ、だねっ。
元々、手を繋いでいたのでかなり近かった距離を、さらに詰めて
もう密着状態だよ~。しかも耳元に暖かな吐息があたって……ぁっ。
「…………」
加えて、二コラから向けられる「コイツら本当に連れて行っても大丈夫か……?」って感じの、
という、とても
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