思索 4

「ふわぁぁぁ、ぅぅん…………あれぇ? なんだろー、ちょっとあたまがおもいような……?」



 どうも思考がはっきりとしないなぁ。

 ただ単に寝起きのせいかもしれないけど、転生してからというもの身体の不調を感じたことすらなかったから少し気になる。


 そういえば昨日、二コラに付き合って三軒も店を回ったから、疲れが出たのかな?

 アルコールは耐性スキルで無効化されるから関係ないとしても、体力は消費するよね。



「あと、お腹の辺りも重い……」



 それに考えてみれば、この身体で大体一カ月くらい過ごしたことになるんだよね。

 いくら化け物みたいな身体とはいえ、疲労くらいは溜まるか。


 筋肉痛にもならない、今までの方がむしろおかしかったんだよ。



「えっと、こういう時こそ魔法っと。<ヒール>――うん、治ったね」



 気分スッキリって感じだ~。やっぱり、魔法は最高だね!

 さてっと。じゃあトイレに行って、こっちもスッキリさせてこよ~。




 ***




「…………そう、だよね……。女の子なら当たり前……うん、それはそうだ。

 そっかそっかぁ。ホントにボク、女の子になってたんだなぁ……」



 ベッドの縁に腰掛けた僕は、自分に言い聞かせるように独り言を呟いていた。


 意味不明だろうけど、これは仕方のないことなんだよ?

 ――だって、転生直後以来の驚きを味わったんだからさ。



 ええと、何があったのか説明すると、トイレで自分の血を見たから驚いたってことで……まぁ要するに、アレだね。

 生理ってやつだね。


 こういう時って、お赤飯を炊くんだっけ?

 いや、こんなに成長してるんだから初めてのはずないか。



「ん? 待てよ? ってなると……子供がつくれる身体だってことだよね?」



 ふと、色々な段階をすっ飛ばした考えが浮かんできた。


 子供か……うん、ちょっと興味あるかも。

 前世では考えもしなかった――というか、考えられるような相手がいなかった――事だけど、せっかく自分で産める身体になったんだし、一度くらい体験してみてもいいんじゃないかな。


 それで、フローラみたいな美少女を自分の好きに育ててみたりだとか……夢みたいだなあ~。



「う~ん。となると、重要なのは相手かな?

 誰でもいいなら、ナンパ男でもそこらで見つけて路地裏でヤれば、デキはするんだろうさ。

 だけどやっぱり、子供は美少女じゃないとね~」



 変なのを相手に選んだせいで可愛くない子が生まれたら困るから、可愛い相手を選ばないといけない……ってそれ、ぴったりながいるじゃん!

 どう考えてもアンジェだよ。だって、僕とアンジェの子供なんてもう美少女確定だもの~。


 何なら、男の子でも女の子でも、美少女に成長すること間違いなしだよねっ!



 ――と、そこまで妄想したところで、アンジェとカルラと出逢った日の夜の出来事を思い出した。


 そういえばあの時、「次はないよ?」って感じで、拒絶する言葉を言っちゃったような……。

 あの時は夜這い騒動で気が動転してたというか、女の子なら怒るのが普通だろうなって、よく考えずに言ってしまったけど……あんなこと言われた相手になんて、アクションもう起こさないよねぇ。



「そもそも、アンジェって女をそういう対象として見てるのかな?

 カルラとは同性の友達って距離感だったし。たぶん、ラドミラとも同じだよね……」



 夜這いはカルラのためだったわけだし、そもそもが勘違いであったわけだからね。

 性的対象として見てないのは確かだと思うな――逆に言えば、友達のためだったら不本意な事もするってことになるね……ふむ。


 ま、いいや。心から好きになってくれなくてもいいんだからさ。

 案外、「子種ちょうだい♪」ってお願いしたら、素直に頷いてくれるかもしれないし……最悪、魔法で動けなくしてから搾り取るって方法も、ね?



「あっ、もしアソコが反応しないとなった時は、どうしようかな?

 魔法かスキルで、強制的に性的興奮を引き出す効果のあるものは…………おっと、もうこんな時間だ。

 そろそろ準備して、冒険者ギルドに行かないと」



 気が付けば結構な時間が経っていた。

 色々と考えはしたけど、子供のことは保留にするつもりだよ。


 まずは――父親ってだけで美少女にしたわれているあの人が、これからどうなるのか見届けたいからね。



 それにしても、大金を稼ぐ方法かー。

 二コラ、昨日は結局何も思い浮かんでなかったけど、どうするつもりなんだろう?



「それと、生理用品ってどこで買うんだろう? ニコラ……は未経験かもしれないから、フローラに聞いてみようかな」



 異世界の生理用品事情がどうなっているのか空想しながら、朝の支度を進めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る