第3話 反撃する者

 最後の避難キャラバンが東門を出発した。ギルドマスターが右手の親指でサムズアップ。


 北からはジェスターが呼び寄せた氷竜の群れ10匹程、町の中なら人間を食べ放題と、急いで飛来した。

 南からは私が呼び寄せた毒竜の1家族が、毒竜にしては素早く走って来た。殆ど馬と同じ速さ、大きさも1メートル強、竜の中では最も小さいが、その猛毒は竜族の中でも最強、解毒薬は私の作る不完全な物だけ。

「いらっしゃい、良く来てくれたわね」

「ギャッギュギャッ(本当に人間を食べ放題か)?」

「この町の中ならね、もう直ぐ西から沢山来るから」

「ギャッ(確かに、西風は人間の臭いだ)」

 悲しい事だけど、もうジェスターも私も人間には含まれない。ジェスターは氷竜の臭い、私は毒竜の臭い。


「ジェスターさん、妖精王と精霊王の方はお願いします。私は嫌われているので」

「もう頼んだ。一撃だけで、ラングレンに戻るそうだ」

「では、ジェスターさんも避難して下さい。ベノム・トラップを最大級で行います。毒竜の沼地より酷く成ります」

「それは確かに堪らない、あの沼地より酷くなるのか・・・俺のブリザード・トラップも最大級だから、君も注意してくれ」

 ジェスター=ランカスター、バイラス帝国に滅ぼされたランカスター王国の騎士団長にして第一王子。

 最初から青い鎧だと言っていたけれど、白銀のミスリル鎧にプラチナブロンドの髪と、私も聞いていた有名人。

 竜魔人が身に着けた物は、下着までその竜の色に染まってしまう。品質が良ければ、その変化が遅くなるだけ。

 私が泊まった部屋のベットは、今朝にはドロドロに溶けていた。だから、宿には泊まれない。常に野宿、最後にはその竜の姿に変わる、これが竜魔人の宿命。

 大きく開かれた西門から帝国兵達の鴇の声。


 さあ、骨も残さず溶けてしまえ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

竜魔人の紋章 @masakana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ