第4話 なれたのかな‥プロに
EDIを進めていくうちに当然相談事がでてくる。
1.自分の意見を整えてから相談する
2.具体的な方法を考えてから相談する。
3.先方と相談してから相談する。
要は、できるだけ詰められるものを突き詰めてから小林さん、室長に相談すれば、あきれられることはない。
今までの経験で学んだことです。
相談前のこれらのことをやっておくと、まあ、ほとんど相談することはなくなるのですが、当然ね、データの通信料、先方システムの使用料の負担する部署は営業の経費なのかこちらの経費なのかとか、開始時期などは相談しないと。
「返品データ、部品出荷分のデータ、臨時で電話やFAXで受けたデータも送ります。EDIで受信してないが先方と関わるデータは、相談したらそれも欲しいとのことです」
「そうだな‥、へぇ‥」
へぇ‥って、まあ慣れてます、その反応。
「納入価格は困ってます‥、うちのマスターから引っ張ってくるか、先方データに入っている価格にするか‥」
どちらも正解なのでこれは困ってます。
「どう思う‥」
「私は‥、うちのマスターの価格がいいと思います。先方が間違ってくる確率のほうが高いですし、間違った単価でこちらが気づかないと、高ければいいですが安いと損します」
うちの損にならないよう全体を見たつもりです。どうですか?
「“それ”使え」
言葉が足りませんよ、慣れてますが。
「はぁ‥“それ”‥」
それって何にかかっている‥。
「返品、パーツまで気付いたのはな、まあまあだ‥」
珍しく褒めたのか‥褒めたんだろうな‥。
「納入価格は先方のを使え」
「いいんですか‥」
“それ”になってないと思うんだが。
「新製品とかな、取り決めてないこと、もしくはうちの社内の登録申請が間に合わなかったときとかな、考えられる。そうすると最悪0円で出る。もしくはバカ高い定価で納入になる」
「はぁ‥、でもいいなりの納入価格でいいんですか‥」
「営業に確認させるんだ‥」
“それ”も‥と続くのだろうが、必要以外のことはお酒をいれてもなかなか話さない室長の言葉は察するしかない。
数量といっしょに納入単価を営業担当に確認してもらう、その為、先方もうちもこなれてくるまでは、一端流れを止めて、自動で出荷まで行かせない。その理由に、一端流れを止める“その理由“に“それ”、先方の納入価格の確認を使えとのことなんだね。
難しい、難しいよ。
「そうしろ‥、なあ、小林、納入価格は先方データがいいよな」
近くの席で聞いていたのに何も言わなかった小林さんに、室長は声をかけた。
「もし、単価間違ってたら単価訂正の伝票を入れるだろう。それも営業さんのお仕事だからいいんだよ。データの単価活かせ」
小林さんちょっとだけ画面から目を離して僕を見た。
「でな‥、その単価訂正のマイナス、プラスのデータも送信できるようにしといてな、まあ、もうそうしているんだろうけれどな‥」
「はい‥」
“すでにそうしてます‥”
僕も全部は言わないでもいいよな、もう。
EDIは稼働直後はいろいろありましたが動きました。いまやほとんどの大手はEDI、EOSですよね。
これ、動いた時に初めて思いました。
“ひょっとしたら僕はプロの端くれぐらいになったかな‥”
しごかれたと思う。僕がシステム室に入ってからは室長が十年ほどで定年を前にして異動となり、小林さんと僕とでその後のシステムをまわしていた。しごかれたね‥。新入社員なんて誰も入ってこなかったし、異動でも新しい室長が来ただけだし。それに、自分の異動もなかったし‥。
判断、これはずっと難しかったです。システムに乗るかどうかの判断はまだわかるにしても、システムに乗せないほうがいいかどうかの判断は‥。技術と経験と直観で判断するんだけど。
年をとってからかな‥
「やってもいいけれどおすすめしないな‥」
と小林さんと比べれば自分でもかなりソフトな性格だと思うので、そのため依頼がよく来たんだけど、やんわりとね、断ることはありました。
営業や財務や人事で管理できない、運用できないと思われる仕組みや、特にシステムの売り手が、アウトプットだけ、
「こんな帳票でます、便利でしょう」
と言いながらインプットを言わない場合などはね、やんわりとお断りしてました。
詳しいアウトプットには詳しいインプットが必須だからね、その工数も言わない売り込みでも、現場は信用しますから。
給料はもらってたから、プロだったのかな‥。
技術と経験と直観は正しかったのかな‥。
父のような驚くようなプロになれたのかな‥。
とかね、もう昔のことですけれど、僕はどうだったんでしょうね。
プロになれていたのかな…。
了
プロになれたかな‥ @J2130
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