アストロ鉱夫 3
4.
2229年5月11日(月) PM2:30
けだるげな昼下がり、俺はソファーに寝転がりタブレットで読書をしていた。
シロが俺の右脇の間に入り込んで眠っている。
そんななか管理者よりコールが入った
『ごきげんよう、ルカ様、調子はいかがですか?』
『いつも通りぼちぼちだよ、それで管理者様が何の御用で?』
『本日はルカ様にお仕事のご依頼をしたくて連絡しました。ルカ様は小惑星帯の資源開発事業についてはご存じでしょうか?』
『ああ、知っているよ、でも俺は行く気はないよ?家族や猫たちを置いて一年も小惑星で単身赴任なんてとても耐えられない。』
『もちろん、ルカ様には宇宙に行ってもらう必要はございません。ルカ様にやっていただきたいのはその資源開発事業に携わるスタッフのケアをしていただきたいのです』
『それでケアの仕事とはどういう仕事なんだ?』
『基本的に小惑星帯の開発はほぼ全てが無人化され、実際に人がやる仕事は一日2~3時間程度でございます。問題はその残りの余暇の使い方を持て余す人が多いという事です。我々としてもスタッフ間で交流できるコミュニティボードの設立等、少しでも刺激ある生活になるように努力はしているのですが、やはりこういうサポートは人間にやってもらうことが一番なのです。』
『それと明日、有望な志願者が面接に参ります。その時に面接官として、彼を評価する手伝いをお願いします。』
『ちょっと待てよ、拒否権はないのか?』
『私達はルカ様が引き受けてくれると計算しています。』
『いや、まぁうん…やるけどさ。』
『それでは明日の13時、こちらの開場にお越しください。』
5.
2229年5月11日(月) PM3:00
あいかわらず暇を持て余して俺はベッドの上で寝そべっていた。
壁面モニターに表示される数々の番組は頭の中には入ってこない。
そんな中俺のインプラントにメッセージが入った。
『おめでとうございます、トシアキ様は今回の宇宙資源開発スタッフ候補として選抜されました。つきましては以下の日時に面接を実施します。・・・』
明日の13時か…
これでこの暇から多少は解放されればいいのだが…
6.
2229年5月12日(火) PM1:00
俺は指定された会場に開始時間の五分ほど前に到着した。
職員と思しきB級アンドロイドにここで待つように言われたので座って待っている。
B級アンドロイドがまたやってきて面接の準備ができたのでついてきてくれと言われたのでそれに従いついて行く。
B級アンドロイドがドアをノックし、中の面接官らしき人間がどうぞと返答する。
アンドロイドがドアを開けると時代がかったスーツに眼鏡、ひっつめ頭の女とおそらくNラバー製であろうキャットスーツにジャケット、ショーパンを穿いた男が座っていた。
「どうぞお席にお座りください。」
着席を促されたので椅子に座る。
「トシアキ様ですね、私は管理者、私の隣に座っている方がルカさんです。」
どうやら目の前の眼鏡女は管理者のマリオネットのようだ、ルカという男はおそらく人間だ。
「トシアキ様のパーソナルデータは既に確認しております。適正に関しては問題無し、十分に今回のお仕事を果たせられると私達は計算しています。」
「だとしたらわざわざ面接なんてする必要なんてないのでは?」
「それは今回あなたの専属カウンセラーとなるルカ様に同様に問題がないか確認してもらうためです、もしルカ様が不適と判断された場合は、今回のお仕事に関してはご縁がなかったという事になります。」
「管理者はそう言っているけど、そう気張らないで。」
「トシアキ君は冷凍睡眠に入る前はずっとVRに籠っていたようだけどどうしてVRをやめて冷凍睡眠に入ろうと思ったのかな?」
「ただ、VRに飽きたんです。なんというか急にむなしくなったんです。」
「今回この仕事をしようと思った理由は?」
「この仕事を終えたらF級市民でもS級市民になれると聞きました。そうなれば自死することも再度冷凍睡眠をすることもできます。それと1年という期間、暇をつぶすにはよい仕事だと感じました。」
「トシアキ君は確か冷凍睡眠前はC級だよね?S級になったらやれることは遥かに増えるけどその恩恵を受ける気はないのかな?」
「そうですね…VR内ではクラシックカーをコレクションしていたんですけど、せっかくだから現実でもクラシックカーの一台は持ちたいですね。先日R32のGT-Rをみたんですよ、ああいうのに乗りたいです。」
「そのGT-Rは俺のだね、これでしょ?」
俺のインプラントに画像が送られる。確かに先日見た32GT-Rだ。
「せっかく夢があるんならそれをかなえてから自死しても遅くはないと思うけどね。
それに、ノスカー関係なら自分も色々教えてあげられるからね。」
「そうですね…せっかくS級になれるんだしその恩恵を受けてからでも死ぬのは遅くはないですね…」
「管理者、俺は彼が十分に仕事を全うできると思っている。」
「それでは採用ですね、お疲れ様です、事前研修として明日から一か月ほど指定された訓練所で実施します。訓練後、担当する小惑星へ移動、前任者と交代してください。それではお疲れさまでした。」
どうやら無事、採用されたらしい。明日からは訓練生活だ。
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