東西アメリカ資源供与要請 4
6.
2229年11月25日(水) AM10:10
12月の停戦期間が目前となり、私達、資源調整ユニットαはアメリカ行きの準備に追われていた。
「しかしなんなの?あれだけ図々しく人に資源を要請しておいて、外交官の泊まる場所はこちらで用意しろって…図々しすぎない?」
「国が分裂してもその国の気質は変わらないものよ、旧世紀に存在した北朝鮮と大韓民国だったかしら?体制はまるっきり違うのにタカリ体質だけはそっくりってことで有名だったわね。」
「朝鮮半島にあった国だっけ?もう今は更地なのよね…」
「そういえばお嬢、例の車、今日来るんだろ?」
「うん、せっかくだから同時にお披露目しようって、待って今ちょうどエアーシップのハンガー前に到着したって。」
エーリカさんにも到着した旨をインプラントで連絡し私達はエアーシップのハンガーへ向かった。
7.
2229年11月25日(水) AM10:20
ハンガーに到着するとそこには車両運搬用のトラックが2台停まっていた。
ホンドレーシングとトヨダgyazooレーシングの車両運搬車両だ。
わが日本を代表する自動車メーカー2社が社運をかけて車両を制作する、一見ロマンがある話ではあるが…
「ようするに暇ってことだよね…」
わが日本の技術を支えるスタッフ達が車両を下ろすために手際よく作業をしている。
先に私達が使う車両が降ろされる。
「なにこれ・・・」
確かに要求事項に盛り込んだことだ。
今回の要求事項は、できうる限りの防御力と攻撃性能、ガソリンエンジン(ハイオク可)、5人乗り、この3点だ。
確かに私の要求事項は満たしている…満たしているのだが…
「私達は交渉に行くのであってデスレースに参加するわけじゃないんだけど…」
ベース車両:ダッジ チャージャーSRT8 2008年モデル
エンジン: ホンド技研 BXG61V ハイオクガソリン仕様V8エンジン 6100cc 1250馬力
武装:レーザーガトリング2門(ボンネット上に装備オートロック機能付)、対装甲車両ミサイル4本
装甲:特殊成型ナノカーボン装甲、 エネルギー転化装甲搭載
わざわざ外見はつや消しの黒で塗り潰され、2本の赤いレーシングストライブが自己主張する。
ガラス部にも装甲が取り付けられている、これでは外が見えない。
「ねぇ、これじゃ前見えなくない?」
「大丈夫です、窓ガラスはモニターにもなっていて車外に取り付けられたカメラの画像を合成して普通に運転できるようにできています。ボンネットのレーザーガトリングも透過されますのでガラス越しで見るよりはるかに運転しやすいですよ。最悪カメラが破壊された時にも備えてあってガラス部の装甲はパージ可能です。」
どうやら一応の対策はしているらしい。
「まぁナツキさん、頭コテコテの西アメリカに行くにはお似合いの車両ですわね。」
エーリカさんが感想を述べる。
褒めているのかけなしているのかわからない。
そうこうしているうちにユニットΘ向けの車両も降ろされたようだ。
ベース車両:ベントレー コンチネンタルフライングスパースピード 2009年式
エンジン:トヨダ自動車 YGZG60 ハイオクガソリン仕様試作W12エンジン 6000cc 1200馬力
武装:レーザーマシンガン2門(ボンネット内に格納オートロック機能付)、 小型マルチミサイル8本
装甲:特殊成型ナノカーボン装甲、 エネルギー転化装甲搭載
エーリカさんの方の車は一見、武装が施されているようには見えない。
戦闘状態になるとボンネットとフロントバンパーのエアスクープから武装がせり出す。
ハルにぃには悪いが個人的にはこっちの方がいい。
「エーリカさんの要望に従い、元車両のエレガントさを損なわないように設計しました。W12エンジンは我々の方でも初めての試みでしたので開発チームとしてもよい勉強になりました。ああ、試作といっても試験結果は良好、肝心の時に機嫌を損ねるなんて無様な事は起こりません。」
どうやら、この一見ノーマルにしか見えない見た目はエーリカさんの要望だったらしい。
つまり私の車が世紀末仕様なのはハルにぃを信頼しきって要求事項以外を全てお任せしてしまった私の責任だ。
ホンド技研とトヨダ自動車の機械オタク達がお互いのマシンを見て感想や意見を交わしている。
「どうですナツキさん、気に入ってもらえましたか?」
ハルにぃはすごく自信満々だ、エーリカさんの車の方がいいなんて言えない。
「うん、すごくかっこいいと思うよ。ハルにぃ、ありがと。」
私がお礼を言うとハルにぃは上機嫌で仲間の機械オタク達のもとへ去っていった。
本当にこれで西アメリカの街中走っても大丈夫なのかな・・・
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