東西アメリカ資源供与要請 3

4.

2229年10月20日(火) AM11:10


『ええ~本当にこの計画実施するの!?』

『さすがはエーリカ様ですね、そしてやはり人類という種は私達コンピューターでは計算できない発想力があります。エーリカ様の提案、より確実性を増すために私達の手で手直ししますが、概ね、エーリカ様の計画で進行しましょう。』

『管理者さんに気に入ってもらえてよかったわ。それでナツキさん、この計画にはあなたのお父様とその友人達のお力が必要になりますの。ナツキさん、お手伝いしていただけますわよね?』

『いや、それはわかるけど…わかった。父には私から伝えておきます。目途が付き次第エーリカさんにコールします。』


私はインプラントでの会話を終え椅子の背もたれに力なくもたれかかった。

「よかったじゃないかお嬢、前回はできなかった派手なドンパチがやれるぞ?」

「ドンパチするのは私達じゃないけどね…とりあえず親父にコールしないと…」


5.

2229年10月20日(火) PM14:30


ペットキャリアーにランを入れ私はエーリカさんともに実家のガレージの前についた。

ペットキャリアーは助手席に座るエーリカさんが膝の上にのせている。

普段はあまり見ない柔和な笑顔を見る限りエーリカさんも猫は好きなようだ。

いつも通りガレージ内の私の駐車スペースに車を入れようとすると、ハルにぃのFD2の他に、見慣れない車が停まっていた。

「80スープラか…いい趣味してるじゃん。」

恐らく今回の作戦のカギとなる車両作成のために親父かハルにぃが呼んだであろう助っ人の車だろう。

私は駐車スペースに車を停め実家のリビングに向かった。

「ナツキ、遅かったじゃないか。」

どうやら私が一番最後だったらしい、初めて見る男の人が一人ダイニングテーブルに座っている。さすがに実家とはいえ、客人を迎えるのにシャツとパンツは問題があるのだろう、室内でもメイド服なハナねぇとミクねぇを除いてみんな外出時の服装をしている。

あたしはペットキャリアーからランを外に出す。いつもの調子でランはリビングのソファに飛び乗ると丸くなって眠り始めた。実家のシロとトムがランに対して体を摺り寄せて挨拶する、ランは特に何かをするでなくそれを受け入れる。

わがままで無愛想なランだが実家の猫たちはランに対して一種の敬愛の念を持っているようだ。まったく猫の世界はよくわからない。

「待たせたようでごめん、それでその人は?」

身長はハルにぃと同じく170cmちょっと、中肉中背、MZRKマテリアル特有の均整の取れた体、短く切りそろえた髪にフレームレスの眼鏡が知的な雰囲気を醸し出す。

あ、ハナねぇの目が作家の目になっている。

「申し遅れました。私このようなものと申します。」

インプラントに電子名刺が送られてくる。

トヨダ自動車車両開発部1課 開発主任 ナオキ

トヨダ自動車、ハルにぃの勤めるホンド技研工業のライバル会社だ。

「今回は車両が2台必要になると聞きまして、それで声をかけたんですよ。」

意外だ。声をかけたのは親父でなくハルにぃだったらしい。

「ごきげんよう、ルカさん、ミカさん、お久しぶりですわね。」

エーリカさんが親父と母さんにあいさつをする。本当にあの四国での一件に関わっていたらしい。

「久しぶり、エーリカ、元気そうでよかった。」

親父がエーリカさんに声をかける。母さんはかるめの会釈でエーリカさんの挨拶に答える。

「それでハルにぃ、別にハルにぃのチームの開発力を疑うわけじゃないけどさ、なんでわざわざライバル会社の開発主任さんを呼んだの?」

「せっかく2台作るんです、その方がお互い切磋琢磨できると思ってお呼びしました。それに日本縦断レースの件もありますしね…」

どうやら競作することでクオリティを上げる狙いらしい。前回の日本縦断レース、アンリミテッドクラスはたしかトヨダが1位、ホンドが2位だった、どうやらそのリベンジマッチも兼ねているらしい。

「エーリカさんの車は私達トヨダgyazooレーシングチームのスタッフが総力を挙げてお手伝いします。」

「ナツキさんの車はいつも通り僕がしあげますから、前回のマシン以上にいい車にしあげますよ。」

「まぁ、そういうことだ。俺はいつも通り車のチョイスだけは手伝うから、好みのスタイルとかあったら言ってくれ。」

親父は相変わらず車選びを手伝うだけ、車両の実制作はホンドとトヨダのスタッフが行う。

私達は今度の交渉のカギとなる車の準備に取り掛かるのだった。

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