東西アメリカ資源供与要請

東西アメリカ資源供与要請 1

1.

2229年10月19日(月) PM2:30


「ハッ・・・ハッ…ハッ・・・」

私は仕事帰り、行きつけのジムでトレーニングをしていた。家を出てからはジムで家族に会うのが気恥ずかしいので私は両親とは他のジムに通っている。

トレーニングウェアは青色のNラバーレオタード。子供の頃から慣れ親しんだトレーニングウェアだ。

ソーシャル設定はお触り厳禁、会話は知り合いのみ可にしてある。

以前は常連の中には私と肉体的にも親しい関係になろうと、アプローチしてくる人もいたが今は皆無だ。

そもそも私はセックスというものに苦手意識を持っている。すべては私が6歳の時の話だ。

私の家には一つ開かずの間という部屋が存在していた。

両親曰く、適当に物を積み上げた結果、どうにもならなくなって封印した部屋だという。

当時何も知らない私はそういうものだと信じ込んでいた。

確か夏の終わりごろであろうか?本来予定されていた他校との交流会が急遽中止になり、私は本来予定していた時刻より大幅に早く家に帰ってきた。

家の鍵を開け、玄関に入るとみんな出かけているのか、人の気配が全くしなかった。

みんなどうしたんだろうとシューズロッカーを見ると、みんなの靴に加え、タマミさんの靴も置いてあった。

それなのに部屋中探しまわっても誰もいない、ひょっとして例の開かずの間で何かをしているのではと思った私は、開かずの間のドアのセキュリティの解除に取り掛かった。

完全にビジターであれば突破は難しかったかもしれないが、この部屋以外の鍵を持っている私が、セキュリティを突破するのはそう難しくはなかった。

ロックを解除し、静かにドアの隙間から中を覗き込んだ所、私の目に飛び込んできたのは、両親にタマミさん、ハナねぇ、ミクねぇまでもがくんずほぐれつ五連合体している光景だった。

日本の性教育がいくら早いと言ってもここまで強烈なのはさすがに教えようとしない。

ショックだった私は、家を飛び出し歩道近くまで来た所で感情が抑えきれず大泣きを始めてしまった。

それを偶然通りかかった、お隣のカオルさんと一緒にいたおっぱいと股間を丸出しにしていた二人の若い女の人がすごく心配してくれて、落ち着くまでカオルさんの家で休ませてくれた。

カオルさんは即座に私の両親に連絡、10分もしないうちに両親は私を連れ戻しにカオルさんの家にやってきた。

ふたりともとても心配していたのがわかる。あの表情がわかりずらい母さんでさえはっきりとわかるぐらいに心配そうな顔をしていたのが印象的だ。

私はそんな親としての顔と、開かずの間での獣のような顔、どっちも同じ両親だと心に折り合いがつかず大泣きしたものだ。

結局、なんで大泣きしたのか、私がその理由を一切口にしなかったので両親にとっては未だにあの出来事の真相は闇の中なのであろう。

私はそんな過去を振りはらうべくトレッドミルの速度をさらに上げる。

すでに通常のMOGファクトリー製ボディの限界値は超えている。

しかし私は外交官という多少なりとも危険が伴う職業のため、通常のボディと比べてはるかに強力な筋肉と、反射神経を兼ね備えている。

この日常ではオーバースペックな体をいざという時に十全に使えるように備えるのも外交官の責務なのだ。

インプラントに通知が入る、管理者からだ。

明日の午前10時10分よりミーティング、議題は東西アメリカ鉱物マテリアル供与要請について。

技術的には日本はアメリカより数歩リードしているが、それでもアメリカは超大国だ。

内戦でお互いが疲弊していなければ、その矛先は日本に向けられる可能性もある。

それに今回の要請は一言で言えばただのタカリだ。

また海外での仕事になるな、そう思った私は、より念入りに仕事に向けて体を調整していくのであった。

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