そこにいる

ツヨシ

第1話

彼女が行きたいと言うので、心霊スポットに行ってきた。

もちろん気乗りはしないが仕方がない。

志度の小高い山の山頂にある喝破(かっぱ)道場。

その昔、不良少年少女の厚生施設として造られたのだが、あまりにも厳しすぎて多くの死者を出したという噂がある。

屋上から飛び降り自殺をした者がいる。

地下の風呂場では集団自殺があったとか。

木で首をくくった者もいたそうだ。

どこまで本当なのかはわからないが。

道場には車ですんなり着いた。

目の前には電波塔がある。

俺のスマホは全ての線が立っていた。

外観は無機質なコンクリートの箱といった感じだ。

下手な字でいくつもの落書きがされている。

二人でまず屋上に上がった。彼女の希望だ。

「なんにもないし、幽霊もなにもいないわね」

彼女の霊感はゼロだ。

実は俺には血まみれの少女が一人立っているのが見えた。

当然彼女にはそんなことは言わない。

次は中を散策。

そして地下にある噂の風呂場に着いた。

結構広い。

一人ずつではなく、何人も一度に入浴していたのだろう。

いや、させられていたのか。

「なんにもないし、幽霊もなにもいないわね」

彼女がコピーのように同じ言葉を繰り返す。

しかし俺には屋上で見たのと同じく、血まみれの少年四人と血まみれの少女一人が見えた。

ぞっとするような恨めしさでこっちを見ている。

俺は無視した。

道場は一軒家よりは大きいが、巨大な建造物というわけではない。

ほどなくして全てを見終えた。

車に乗ってすぐに、彼女がまた言った。

「なんにもなかったし、幽霊もなにもいなかったわね」

俺は心の中でつぶやいた。

いるよ。

お前のすぐ後ろの後部座席に、血まみれの少女が一人。


       終

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そこにいる ツヨシ @kunkunkonkon

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