第3話 性奴になってください!ダメでした!!!



2022年7月6日 17:45


僕が橋の上で雨に濡れる彼女を見つけたのは天文学的確率だった。カレーを2着しかない青の学校指定ジャージにこぼしてしまい、洗濯カゴに放置された数週間前のジャージを着るわけに行かなくなり泣く泣くショッピングセンターまで制服で繰り出してきた。極度の貧困症を抱える僕はちょっとした事で出費しない。買いたい漫画やゲームに対する金銭感覚なんて桁違いのくせに、だ。


間違いだらけの道はドブに片足を突っ込み、公園の噴水で靴ごと洗い流している内に夕方を迎え、更には雨まで降り出す始末。為す術があるだろうか?いや、ない。


近道を通ると犬に吠えられ、走ると滑って転ぶ。難儀な一日だ。


その一つが狂っていても、死にたがりのような表情をした彼女には会えなかっただろう。


だから巫山戯た言葉だって口をついた。


「あーーー、中までびっしりどっしりぐっちょりいってるし…………んしゅんっ」


高架下で夏を迎えたくせにぶるぶると震えてくしゃみをする彼女が、純粋に可愛かった。


「ぼ、僕のこと、覚えてる?」


「ちっとも?」


「だろうなー」


…………

………………………………



沈黙が続く。印象最悪ぅ……


「ああ、なるほど。脱がせたいの」


「一発目で要望出すとかなに、最近の男子ってみんなこうなの?」


リボンを外し始める……ゥウウウゥー!?


いや、そりゃあ性欲猿な多感な時期ですから。据え膳食わぬはマンの恥。口輪筋が上向きになるのを止められない。


あれ……?でも待てよ?上手い話には裏がある。騙され続けた人生経験が二の足を踏ませる。父と母に身をもって積まされた失敗が性欲を理性の盾「隠ジス」で押しとどめる。あの日3万を父に渡して帰ってきたみたらし団子三本を忘れてはならない。


外腹斜筋がゾワ。汗腺ダバー。


もしや美人局!!!!!!


頭脳をフル回転させ、今考えうる最高の選択肢をヒットさせるためにルートを計算する。


「それとも何?温めてくれるっての?」


あっダメですほわん。香りが方程式をムチのように亀甲縛りにして誇りも粉々に砕かれた。もう目の前の桃色のたわわにくびったけ。


「へぇ……手、出さないんだ」


出せないんだよ。恐れ多い。ーー昔はそうじゃなかったんだけどな。


「名前、何?」


「え?」


「なーまーえ。あるでしょ。私風見華凪。あなた誰」


「お、小木曽!小木曽飛雄馬」


ホントに覚えてないし……


「あっ!」


生徒手帳を落とした。


「ん…………え、なにこれ」


そこには林間学校やキャンプ大会でプロが収めた彼女のスナップ写真や日陰でぼんやりと海を眺めている水着姿、集合写真の一部を切り抜いてお守り代わりにしているしおりなどなど気色悪さ1000パーセントの諸々が…………


「プッペリーナ………………………………」


終わった。

私終わっちゃう。


「…………ふぅん」


「こういうの見て、私にシてもらうもうそうとかしてたの、やばばじゃん」


「予習だけで本番無かったらどうすんのさ、ウケる。乳首の色って見たことある?まぁ見せないけどさ。ぷっ、ダメ君最高っ笑ってない、よっひ、ひひひ」


口元を抑えてあっち向いてるけどおうおうウケる言うとるがな。ここからどう挽回すべきかこっちは必死のパッチのニッチのサッチもいかないってのに…………


「…………全然元気じゃん。純情からかって楽しいのかよ」


「純情?…………くくっ、ジュンジョーってのはマインド死にかけの女性に肉奴隷になれって懇願する心意気のことなんですかー?」


「だ、誰もそんなこと言っとらんわい!……学園のマドンナって、憧れの対象になったりするもんでしょ」


「漫画読みすぎ。理想拗らせすぎ。今時マドンナって……君ほんとにウチの生徒?」


「出席番号7番!小木曽飛雄馬だよ!前半の三連続伊藤に惑わされて忘れてんな!」


そりゃあ黒髪セミロングなんて今時だれも気に留めないキャラ付けしにくい一般モブAですよ!?狩猟ゲーでは大怪獣のうんこに潰され対人ゲーでは余裕の屈伸で恥をさらしCPUとのトランプ対決では毎回負ける始末!ババ抜きコンピュータレベル鬼ってなんなん!!??


「伊藤一郎伊藤二郎伊藤三郎は嫌でも印象強いししゃーなくない?」


伊藤三兄弟アッセンブルさせた学級主任を火刑に処す。


「か、帰る!!!」


「まあ待ちなって。これも何かの縁。君のこと、知りたいな」


こっちは随分と前から知り過ぎてんだけどね……!!!


「ゲームしよっか」


「え?」


「私が負けたら、10秒間あんたに何されても許してあげる。どう?」


……は?


まだ自己紹介もままならないのに、情欲って怖いの……女の子ってわかんない。


またとないチャンス。ここで動かない手は……無い。


「わかった、なら僕が負けたら…………」


「一生風呂に入らない!!!!」


「対価って価値のあるものしかダメなんだよ知ってる?」


「風呂大事だよ!?石鹸無かったらもう死ぬよ!?人類の叡智なめんなこんちくそ!」


「いいか、目の前に聳える山があるならーーー揉まずにはいれまい」


「キミウケる面白い最高」


「行くぜオラァァァアアアア」僕の風呂は歴史から抹消された。


「あァ………………いつかの日の温泉デートよ……お風呂場エッチよ……」


「オトコってわかんないよねー。保健体育で習ったけどどーゆー神経回路してんだか」


「大体、こんなもんに執着して、バッカみたい。いっつも興味無い顔して本読んでるくせに。天才なんだか好色魔なんだか」


「え…………?」


僕のこと、知ってんの?


「はい、残念賞」


目の前には、ブラがあった。


……


ブラがあった?


「早熟な私達、気が合うかもしんないね」


傘を取って、雨音をなびかせて一言。


「あんた不思議な奴だね。イイ。イイよまた明日の放課後会おう」


「じゃ、ばいぴー」


ピースをチョキチョキして、ステップ踏んで華凪は帰って行った。




…………………………………………


6年振りに話して、やっぱり芯は変わってなくて。くだらない事言い合って実際関係性はくまなく一切変わってない。


あえて言うなら、性的欲求が背中を押した


僕の傘は問答無用でかっさらわれたんだ。




ずっと帰ってきて欲しいって望んでた。

幼馴染に戻れなくても、友達でも。

思ったよりエッチで、想像してたより色っぽくて、最高に可愛い声してて、話した全てのことメモ帳に書きたくなる。


確かに帰ってきた。願いは叶えられた。


ーー未来の風呂を失ったことで。


それでも彼女のアヘ顔を守れるなら、安い犠牲だ。


当たり前のように温水シャワーを浴びて(湯船には浸からないのでお風呂ではない)ブラを眺める。


……いつ返そうかなぁ。


その日の夜はベッドの中で悶々と暴れた後、洗濯の手間を考え消沈していった。



次の日。


「飛雄馬!」


「運動の合成?分解について教えてくんない?物理のテストピンチでさぁ」


「報酬?ねだるなぁこいつ。上等じゃん…………報酬はねー」


「あたしのカラダでひとつどうかな」




その後ラウンド〇ンに付き合わされ若返りの代償筋肉痛に一日学校を休むことになるのだが、それはまた別のお話。











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育ち盛りの幼馴染は僕と性欲処理をする @chrono_bbn

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