第5話 頭上で回るは観覧車

 こどもの頃、街を歩く人は僕の目を覗き込んでよくこう言った。


「空に祝福されたんだね」



 僕は学校でも目の色でからかわれることが多かった。友だちが僕を守ってくれた。


「知らねえの?こいつはサキガケなんだぜ!」



 彼がいたから僕は一緒に大学へ進学した。その頃には赤ちゃんは手術して濃い空色の瞳にするのが主流になった。夕焼けの瞳の子もいた。彼女はきっと僕のようになる。


 僕は大学でやっと地の人との歴史を学んだ。空の果てと呼ばれる低い土地も見学した。なぜかそこにも遊園地があった。空の上では風の影響を受けやすいから、友だちとよく行く遊園地では工夫されている。ここのは古くて錆びている。だからこれは勝手に自然に動いているんだ。


「ここは夢のあとだ、我らと地の人が一緒に住んでいた時代がある。それぞれ遊んでまた空と地に帰っていた。ここで地の人に一目惚れしてしまうやつもいたんだ。まあここまでこれる地の人は選ばれた者だからな、結ばれて結婚した、当時はな」



 無理やり進軍した過激派が暴動を起こすまで。それでもこのままなのは、そこに思い出が残っているからだ。先生はそう教えてくれた。きっと君らが成長し世代交代すれば壊されるだろうと。


 回る観覧車の軋む音が頭の上で鳴る。望遠鏡で空の下をのぞけば、雲海の隙間に街が見える。きっと望遠鏡を使えれば下からも観覧車が見えるだろう。



 死者燃えて灰になり空へ

 罪人蹴られ落とされ地へ


 僕は地の人に会ってみたい

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頭上で回るは観覧車 新吉 @bottiti

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