第43話 超危険人物
「世界征服ですか。では一つお聞きします。あなたは何のために世界を征服したいのですか?」
「元夫の魔王ハダルも、結局私を満足させるには至らなかった。強者ゆえの孤独を共有することはできなかった。だからもう諦めた。現世と異世界の両方の民を支配し、あらゆる文物を食らい、飲み干し、それでもなお満足できないならこの世界ともども心中する。そのためだ」
ガスパールは玲香さんの言葉を聞いて暫くぽかんとしていたが、すぐに哄笑しはじめた。
「はた迷惑な自殺者もいたものですねぇ。あなた432歳でしょう? 大人げない。その5歳児にも劣る稚拙な精神で、私の愛すべき世界を壊されてはたまりませんね」
「どうでもいいことだ。私はルーラオムに鎮座し両世界を支配する。それを邪魔する者は、誰であろうと潰す」
「玲香さんは!」
俺はたまらず叫んでいた。
「レヴァまで殺す気なんですか?」
「殺さない。殺すに値しない。私の脅威とはなりえないからな」
これは一安心だな。玲香さんとバトルするという最悪の展開だけは避けられそうだ。俺は一撃で首を刎ねられるだろうから。
にしても、自分の第一子に対してそんな言い草とは。やはりこの人は魔妃だな。
「では、」
レヴァさえ救えれば、万事解決ですね。
そう言おうとしたところでガスパールが口を挟む。
「でも今のあなたたち、超危険人物なんですよ? このまま現世に戻ったら、いや、戻らなくても殺されます」
「そうね。ヒュペリオンが死んだことはもう伝わってるだろうし、懸賞金とか懸けられ始めてもおかしくないわね」
「じゃあもう、逃げ場ないじゃないですか」
元老を殺した以上、魔王城にもいられないだろうしな。
「確かにそうね。でも、好都合でもあるのよ。ヒュペリオンはパシフィック社傭兵部隊の要だった。現世の部隊長が私で、異世界担当のトップがヒュペリオン。その両方を失った以上、リサ社長が切れる有効なカードは存在しない。現世に行ってもすぐには殺されないでしょうね」
すぐには、か。
リサ社長自身が出張ってきたらマズいことに変わりないか。
「で、あなたの目的はレヴァちゃんを救うことでしょ。魔王城で見つからなかったのなら、もう現世で探すしかないわよ」
確かに。
異世界の技術でどうにもならないなら、現世の科学技術でどうにかするまでだ。
っていうかこれ……
「わざわざ異世界に来て殺戮をするだけ無駄だったのではないですか?」
ガスパールが俺の気持ちを代弁してくれた。
「ま、結果だけ見ればそうだけど。異世界ではうまくいかないことが分かっただけでも十分な収穫でしょ」
その割には、流れた血が多すぎる。
だが玲香さんはそんなこと、気にも留めていないようだった。
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