第25話 異世界への第一歩
俺は黙ることしかできなかった。
「これはもう、異世界に逃げるしかない」
玲香さんが沈黙を破る。
「なぜです?」
「一ヶ月経ってもあなたがレーヴァテインを守ろうとする意志を捨てない限り、リサ社長率いるパシフィック社は地の果てまででも追いかけてくる。その娘に生きる価値があるとかないとか以前に、私たちが生き残るためにはそうするしかない」
そういえば玲香さんは異世界の出身だったな。
「玲香さんの居城とかあるんですか?」
「あるわよ。なんたって魔妃だしね」
「でしたら、そこへ案内していただけないでしょうか。彼女を助けたいんです」
気づくと俺は土下座していた。
全く。何をやっているのだろうか。俺は10億を守り通したかっただけだ。それなのに、自ら危険に首を突っ込んでいる。バカみたいだな。
「バカみたいですね」
早速ガスパールが心の声を代弁し始めた。
「うるさいな」
「でも好きですよ、そういう愚かで惨めな姿。ですが、背後には気を付けることですね」
背後? なんのことだろうか。レーヴァテインの本人人格が顕現することを忠告してくれているのだろうか。
「なんにせよ、さっさと異世界に飛ぶわよ」
慌てた様子の玲香さんが右腕を振るうと、黒い穴が虚空に開いた。
「いつまで土下座してるの? さっさと立って入って」
「ありがとうございます!」
俺はついに、異世界への一歩を踏み出した。
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