第22話 パズズ復活

 いや、待てよ。


 悪魔は契約の代価たる魂をいつ回収する?


 依り代が死んだときか? それとも悪魔が再起不能になって地獄へ帰るとき?


 前者だった場合、レーヴァテインを殺すことには意味があるはずだ。


 だがそうではないとリサ社長は言う。


 ならば悪魔をやっつければ、契約していた人格が悪魔に食われていなくなることになる。あの無害そうな少女人格も、消えてなくなる。それでいいのか?


 などと考えていると、レーヴァテインを拘束していた革ベルトが突如として切り裂かれた。映像も乱れ、何も映らなくなった。


「パズズ、もう復活したか。面倒なことになってきた」


 鉄骨が切り裂かれたのか、轟音が響き渡り、床が崩落した。


「落ちる落ちる落ちる!」


「落ち着いて」


 浮遊した玲香さんに抱えられており、俺は無事だった。全く。十億を手に入れてから命の危機に晒されてばっかりだ。


「私がいるし、私がいなくても自動防御システムがあるでしょ」


「だけど怖いものは怖い!」


 落ち着いてなどいられるか。


「もうパズズは殺す。それに伴い人格を一つ削れるし、一石二鳥だ」


 リサ社長は冷酷な指示を下す。やはりあの無害そうな人格も消滅してしまうのか。


 怯えていたレーヴァテインの無垢な瞳を思い出す。それ自体が相手を油断させるための詐術なのかもしれないが、放っておけない。


「リサ社長、どうにかして殺さずに倒す方法は?」


「は? そんなことを言っている場合か?」


 リサ社長は魔力球を放出し、風の刃を打ち消す。取り付く島もないようだ。


「パズズ、昨日ぶりね。同じ手が今度も通用するとは思わないことね」


 玲香さんも異常なまでの殺気を放っている。


 ダメだ。こいつら、完全に戦闘モードだ。レーヴァテインの無害人格が消されるのは忍びないが、ここは世の不条理と思って耐えるしかないのか?


「私とリサ社長がいれば、無敵なんだよ」


 風の刃は全て打ち消され、障害は無くなった。玲香さんは一気に距離を詰め、パズズに強烈な右ストレートを食らわせた。


「ごはっ」


 昨日のレライエのように、パズズの身体は宙を舞い、壁にめり込んだ。まるでボロ雑巾のようだ。


「ここで仕留める。そしてお前」


 玲香さんはレーヴァテインに長剣レディレイの切っ先を向ける。

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