第15話マジックスキャナー
どうにかこのドーム状の形を変えることはできないか? そうすれば、簡単に担ぎ上げられたり蹴り上げられる心配もない。
「棘でも生えてくれないかな」
《承りました》
「え?」
できるのか?
少女が五回目の蹴りを叩き込もうとしてきたとき、結界からは無数の鋭い突起が生えた。
少女の方はというと、恐るべき反射神経で棘が足に刺さるのを回避した。
「おっと、危ない危ない」
敵はなおも余裕そうだ。
「おい、これじゃあ結局相手を倒せないぞ」
俺はマジックスキャナーに向けて呼びかける。すると今度は返答があった。
《対象の回避行動を確認。迎撃方法を変更します》
マジックスキャナーはひときわ強く発光し始めた。
《天上魔法【守護天使の軍勢】》
詠唱と同時に結界は解ける。
「フッ、隙だらけだね」
相手はナイフを手に飛び掛かってくる。これ、本当に避けなくて大丈夫なんだよな?
思わず目を瞑り、腕で顔を覆う。が、攻撃は来ない。
「助かったのか?」
目を開けると、既に少女の手にナイフはなく、代わりに血が滴っていた。その右手には光の矢が突き刺さっている。
次いで、嵐のように光の矢が降り注ぐ。俺には当たらないよう、巧妙に撃たれているようだ。配慮されているんだな。
だが少女の方は、ガスパール並みの身軽さで矢の雨を避け続け、またしても空中へと飛び上がる。
「ハハッ、さすがはリサ。厄介なシステムを構築したね。そうそう。私の名はレーヴァテイン。また会おうか、藤堂英治くん」
レーヴァテインだと? さっきのレライエとかいう悪魔の主人は、こんな子供だったのか。しかも単独でもかなり強い。
レーヴァテインは、愉しそうな笑い声を上げながら、上空へと逃げ去っていった。
「君、避けて!」
玲香さんの声がする。とっさに身を屈めると、男の身体が飛んできて、耳元を掠めた。
「ぐっ、さすがは魔妃。そう簡単には帰してくれませんか」
男の持つ弓は折れ、矢筒は空だ。緑の服はボロボロ。こいつ、レライエか。
「なんとか生き延びてくれたのね。助かった。ガスパールの権能が奴の物になったらとんでもないことになる」
「えぇ、死ぬかと思いましたが、なんとか無事ですよ、玲香さん。ところでガスパールは?」
「ここですよー、主さま」
ガスパールも玲香さんの後ろから遅れてやって来た。実に呑気な足取りだ。パシフィック社とレーヴァテインがこいつの争奪戦を繰り広げているというのに。
「お前、レライエを引き付けてくれたんじゃ……」
「えぇ、レーヴァテインのところへ案内されるふりでもしようかと思ったのですが、途中でこの女に会ったので、ぶつけてみました」
ガスパールは人が争うところを見るのも好きなのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます