第11話 悪魔襲来

 一気に大事になってきたな。


 それにしても、情報漏洩のヒントをわざわざ与えてくるあたり、相手はよほど自分の力を誇示したいと見える。本当にアメリカ政府が相手なのか? なんだか疑わしい。あとでガスパールにでも真相を訊いてみるか。


「社長に相談しないことにはどうにもならないし、一旦本社に戻るね」


「そうしましょう」


 なんだか玲香さんだけだと不安になってきたしな。


 暫く玲香さんに背負われて飛行を続けると、急に静止した。危ないな。危うく振り落とされるところだった。おんぶ紐が欲しいところだ。


「何かおかしい」


 玲香さんの顔が急に曇り、そんなことを言い出した。


「確かにおかしいです。テロ組織の戦闘機が領空侵犯してきたら、普通自衛隊かなんかが気付くはずですよね?」


「いや、そうじゃない」


 玲香さんの顔はどんどん険しくなっていく。


「あっちから、とんでもなく濃い血の匂いがしてくる」


「え?」


 俺は何も感じないが、魔族の血が混じっている玲香さんには分かるのだろうか。


「とにかくそっちには近づかない方がいいですね」


「そうね。すぐに本社へ……」


 次の瞬間、玲香さんの身体は何かに弾き飛ばされ、さらに上空へと跳ね上がる。掴まっていた俺は振り落とされた。


「これを!」


 玲香さんは鍵を投げてよこした。


「何です、これ……っていうか、大丈夫なんですか!」


「すぐに追いつくから!」


 必死の形相で叫んだ玲香さんは、再び不可視の攻撃を受け、彼方へと吹き飛ばされていった。


 まずい。落ちる。というかその前に、今の見えない攻撃で殺される。


 そう思ったとき、若い男の声が聞こえた。


「お初にお目にかかります。私、レーヴァテイン様に仕える悪魔、レライエと申します」


 緑の服を纏い弓を携えた、狩人のような格好の男だった。


 異世界の悪魔。かつて玲香さんたちパシフィック社が戦ったという異世界の悪魔。もう襲ってきたのか。


 悪魔の力によるものなのか、俺は空中に浮かされていた。


「じゅ、10億はやらないぞ」


「10億ではなく14億では? まぁなんにせよ、あなたのお金には手をつけません。私が欲しいのは、複利の女神ガスパール様との契約権です」


「あんな女神となら、今すぐにでも契約解除してやる。おいガスパール、出てこい! 契約解除だ」


 だが返事はない。反応すら何もない。


「ちょっと待て、これじゃあ……」


「仕方ありません。殺して奪い取りますか」


 やっぱりそうなるのか。

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