第7話 『記録~the record~』
実験室Zはいまだ開けることができない開かずの扉となってしまったのでした。
AIモノリスの解析でさえ、150時間はかかるとのこと……。
つまり1週間はあの扉は開けられないのです。
それまでは、カメラによる内部映像で判断するしかないわけですが、まあ、ほぼ間違いなくヴィクター博士は死んでいるのでしょう……。
「そういうことだったのか……。だから僕らを現場に案内することなく、こんな部屋で映像を見せるわけだ。」
「その通りです。キノノウ探偵。しかしながら、モノリスの監視カメラでの正確な映像解析によるものです。間違いないと断定できますわ!」
ヘレナがそうきっぱりと告げた。
「では、事件のあったと思われる犯行推定時刻はいつですか?」
「はい。それは8月7日……、つまり、キノノウ探偵がこの島に到着した今日より3日前の深夜2時15分から3時までのおよそ45分間と推測されています……。」
「ええ!? そんな細かい時間までわかっているのですか!?」
私は思わず声を出した。
「ええ。ジョシュアさん。監視カメラの映像記録から、この時間の間にヴィクター博士が息絶えたとほぼ確定しております。」
「じゃあ、犯人もわかってるのではないのですか?? そんなはっきりわかるのなら、きっと犯人も映っていたのでしょう?」
「それが……、それが奇妙なことに……。」
コンジ先生がそこで口を開いた。
「映像記録の状況からして、アンドロイドの『アダム』しか犯人足り得ないと……、言うことですね?」
またしても、コンジ先生が奇妙なポーズで指を前に出した。
「ええ……。そのとおりです。最後に『実験室Z』に入った時の映像が監視カメラで記録されています。その後、ヴィクター博士をたった一人残し、『実験室Z』から他の人たちは出ています。そして、なぜかヴィクター博士は『実験室Z』内部の監視カメラをすべて停止させています。」
「つまり、『実験室Z』の中で何が行われたのかはわからない……と?」
「そうなんです。そして、その後、いつまでも応答しないヴィクター博士の心配をしたメアリー博士、助手のアルネとウォルフガングの三人がヴィクター博士に呼びかけを行ったが、応答はなかったという……。そこで、モノリスに指示を出し、内部を確認したところ、ヴィクター博士が倒れているのがわかったのです。」
「つまり、まとめると、以下の通りとなります。」
アンドロイドであるアグライアーがここでまとめてくれました。
~~以下記録~~
8月6日 PM23時15分
ヴィクター博士、メアリー博士、四大助手のアルネとマハラル、ヴォルフガング、周の4人、トップ研究員のヘルメス、ヘロン、フィローナ、マキナの4人が、『実験室Z』のある研究所の地下5階にエレベータから向かいました。
8月6日 PM23時16分
10名が地下5階エレベーターから出たところを地下5階エレベーター前監視カメラで確認されています。
8月6日 PM23時18分~20分
博士たちはそれぞれ自室に入るところが確認されています。
『制御室Z』にアルネ、ウォルフガング、ヘルメス、マキナの4名が入りました。
『制御室Z2』には、マハラル、周、ヘロン、フィローナの4名が入っています。
8月7日 AM0時00分
監視カメラ映像がすべて翌日へと切り替わります。
8月7日 AM1時
ここまでそれぞれ部屋から出たものは映像に映っておりません。
8月7日 AM1時01分
周が階段から地下4階にあるトイレに向かって、その数分後にまた下りてきて『制御室Z2』に戻ったところが確認されています。
8月7日 AM1時15分
メアリー博士が自室から出て、『制御室Z』に入りました。
8月7日 AM1時24分
ヴィクター博士が自室から出て、『制御室Z2』に入りました。
8月7日 AM1時35分~41分
ヘロンとフィローナがそれぞれ階段から地下4階のトイレに向かい、やはり数分後に下りてきて『制御室Z2』に戻ったところが確認されています。
8月7日 AM1時46分~1時54分
アルネ、マキナがそれぞれ階段から地下4階のトイレに向かい、やはり、その数分後に下りてきて『制御室Z』に戻ったところが確認されています。
8月7日 AM2時00分
メアリー博士とマハラルが部屋から出て、『セキュリティ-ゲート』の前に移動しています。
8月7日 AM2時03分
ヴィクター博士とアルネが部屋から出てきて、『セキュリティーゲート』前のメアリー博士とマハラルと合流しました。
8月7日 AM2時04分
『セキュリティーゲート』がオープン。
8月7日 AM2時05分
『実験室Z』の『二重扉』の外側扉がメアリー博士によってオープン。
8月7日 AM2時06分
『二重扉』の内側扉がヴィクター博士によりオープン。ヴィクター博士、メアリー博士、アルネ、マハラルが『実験室Z』内に入ったことが、『セキュリティーゲート』内部通路に設置してある監視カメラにより記録されています。
8月7日 AM2時11分
メアリー博士、アルネ、マハラルの3名が『実験室Z』から出て、それぞれ『制御室Z』、『制御室Z2』へ戻りました。この時点で『実験室Z』内部にはヴィクター博士ただ一人となっています。まだこの時は『実験室Z』内部の記録用カメラが監視カメラと連動されており、内部の記録が確認できております。
8月7日 AM2時15分
後に判明しますが、『実験室Z』内部の記録用カメラがこの時間で停止されており、内部の様子がこの時間以降、記録されておりませんでした。
8月7日 AM2時40分
ここまでそれぞれ部屋から出たものは映像に映っておりません。
8月7日 AM2時41分
マハラルが階段から地下4階のトイレに向かい、やはり数分後に下りてきて『制御室Z2』に戻ったところが確認されています。
8月7日 AM2時55分
周がもう一度、階段から地下4階のトイレに向かい、やはり数分後に下りてきて『制御室Z2』に戻ったところが確認されています。
8月7日 AM2時59分
ウォルフガングが階段から地下4階のトイレに向かい、同じく数分後に下りてきて『制御室Z』に戻ったところが確認されています。
8月7日 AM3時05分
すべての実験項目が終了したことを確認し、『制御室Z』および『制御室Z2』から4人の研究員が外に出てエレベーターに乗り上階へ移動した。
8月7日 AM3時08分
4人の助手も『制御室Z』および『制御室Z2』から出て、『実験室Z』内部ヴィクター博士に呼びかけたが、応答はなかったという。
8月7日 AM3時10分
メアリー博士とアルネ、ウォルフガングの3人が『制御室Z』から出て、2名の助手はそのままエレベーターに乗り上階へ行った。
8月7日 AM3時15分
メアリー博士は自身の『研究室』に戻りました。
8月7日 AM7時05分
アルネが再び地下5階へエレベーターで下りてきて、その後『特別実験室Z』の強化ガラス越しに、何者かが血まみれで倒れているのを発見しました。
そこまでじっと確認していたコンジ先生がひとことこう発したのです。
「密室殺人……というわけだな?」
私たちは息を呑み、寒気すら覚えて恐怖していたのですが、コンジ先生だけは不敵な笑みを浮かべ、少し嬉しそうでありました。
ああ……、コンジ先生、こういう謎の展開に燃える性格でした……。
~続く~
「続きが気になる!」
「犯人、当ててやる!」
「怖いけど、面白い!」
と思ったら、
トップページから ☆☆☆ から、作品への応援よろしくお願いいたします!
面白かったら☆3つ、つまらなかったら☆1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当に嬉しいです(*´ω`*)b
何卒よろしくお願い致します!!
あっちゅまん
化け物殺人事件 〜フランケンシュタインの化け物はプロメテウスに火を与えられたのか?〜 あっちゅまん @acchuman
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。化け物殺人事件 〜フランケンシュタインの化け物はプロメテウスに火を与えられたのか?〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます