9 ロイヤルミルクティー
火曜日、今日は午前
今日もすぐにロシアンブルーへ向かった。
茶色の
ガラスをたたくと、
「今日はずいぶん早いじゃないか。まず
「はいっ」
ほうきとちりとりをわたされる。さっき教室の
カフェエプロンを
「終わったらネコトイレの
「それも?」
「
「にゃ~ん」
すると
「もしかして、ありがとうって言ってくれてるの? かわいいね~」
ギューッと
「みゃあん」
ナナちゃんは頭をプルプルッと
「はは…、今きれいにし終わったところなんですけど」
もう一回トイレをきれいにして手を洗い、ゴミを捨てて
「今日は何かイヤなことがあったのか。この世の終わりみたいな顔して」
ドッキーン!
昨日はミスばっかりだったけど、それで落ちこんでるわけじゃない。今日は
一つは昨日ピアノ教室をサボったことが
もう一つは「
「ふぅん。どうしてサボった? サボるなりの理由があるんだろう?」
”モヤモヤ”に
カウンターの中でクロツキがパカッと
「そういえばクロツキ、金曜日にル・ブランで
ふとわたしが言うと、体全体でビクッとして
「お、おおおれじゃない」
「うそ! パティシエの中で一人だけネコだったもん。
すると
「休みの日に
「
「スイーツセットはまだ始めたばかりでバリエーションも少ないし、買ってきたものを
わたしは言葉が出なかった。
「だってネコなのに」
「なんだよ。ネコに夢があってもいいだろ」
ネコは
お
「これもな、ミルクティーに合うように三
「それって自分で
「そうだけど」
「すごっ」
お
「なんかくすぐったい動きだね。おもしろ~い」
その間にクロツキは
「コタツの
バラのマークのあの牛乳、一番高いやつだ。パックのデザインがかわいいからこれにしてってママに
それから
「わぁ、きれいな色。それに茶葉が下から
やさしい色合いのお茶の中を、くるくる現れては消える黒っぽい茶葉の
うわ! はじっこからモコモコした牛乳の
「
「えっ、もしかしてこれわたしに?」
スプーンで三杯お
「ほら、ロイヤルミルクティーだ」
ロイヤル! なんていい
ふうふうしながら飲むと、まろやかだけど
しばらく二人とも
「……わたしね、メガネをかけてから変な顔とかキモいって言われたり、
「二週間もすればみんな
「クロツキみたいに、その、か…かっこいい人にはわたしの気持ちなんて分かんないよ」
「分かるさ。ネコだって人間と生きていくなら、見た目が
それは重い。重たい。わたしの
どうせわたしの
「オーディションのためにピアノの
ル・ブランで
「
くもったメガネが晴れていく。使い終わったお
「おれだってル・ブランで
すごいなぁ、ネコなのに
「ネコだった時は、人間はおれの声なんて聞こえないふりしてた。でも人間には言葉があるじゃないか。思いを言葉で伝えようとしたらきっと変われる。それは目に見えないほんの小さなものかもしれないけど、
今日のクロツキは
まるでミルクティーみたいだ。わたしみたいな
「ネコだったおれにできたんだから、人間に
そうかな。わたしにもできるのかな。何かが変わるかな。
って
「…ワルネコのくせに」
「おっ、お前だってマンクス
「それは
どうしてクロツキは人間になったのかな。
聞いてみたいと思ったけど、その
「コタツが
黒いエプロンを外すと、
「これ…チャンスじゃない?」
思いがけないロイヤルミルクティーですっかり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます