四話 常世

常世。それは死後の世界。魂を浄化し輪廻転生の輪に戻す場である。

その常世の管理者闇之王は、、、怠けていた。

「ああ~、鬼神様のせいで深淵が流れ込んでおるし、その鬼神様には逃げられてしもうた。珠姫がおったときはあんなに楽しい日々であったというのに。」


「恐れながら闇之王よ、深淵を抑えれるのは貴方様を除けばごく少数です。深淵に飲まれてしまう前に手を打たねば常世が崩壊してしまいます。どうか、お頼み申します。」


闇之王はちらりと流し見る。

ああ、こんな部下がいたっけな?まぁ、常世が崩壊しては面倒なことになる。どうしたものかのう〜

 

「闇之王様ー!妖怪郵便です!送り主はあの珠姫様のようです」


「え?珠姫!?待て待て!偽物ではないのか?あの子は死して久しいぞ。」


「私はこの目で紅の鬼神を見ております。手紙に付いた神盟の血からあふれる霊力を見間違うことはございません。その目でご確認頂ければわかるかと」

古参の部下から手紙を引っ手繰るように奪うと手紙を一心に読み始める。


「………これは、本物であるな。懐かしいのぅ〜あの子は黄泉帰っておるのか。っぷ!すでに鬼神様は尻に敷かれておるようじゃ!はっはっは!愉快愉快!

皆のもの、紅の鬼神は黄泉帰り、鬼神様がこの深淵を塞いでくれるそうじゃ。儀式神楽の準備をせい!」


(ほんに、愉快じゃな。今ひとたび時代が動く。星の定めを覆してみせよ、珠姫)







ああ、あの懐かしき日々。常世に新婚旅行で来たなぞとほざく馬鹿夫婦はお前たちくらいなものじゃて。常世の絶叫ツアー!とかぬかして深淵の池を泳いだり、剣山の剣をバラバラに砕いて道を作ったりと、とんでもない夫婦バカップルであったな。


ようやく、ようやくもう一度出会うことができたのじゃな。もうあのように絶望した宗一郎は見とうないぞ?窶れて泣き腫らして迷子の子猫のように彷徨うあの痛々しい年月。もう二度と手を離さぬように握っておやりよ、珠姫。妾はそばでお主たちの行く末を見守ろう、魂の還るその時まで。

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桜花 雪カメ @yukisil

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