三話組合からの依頼

扉を開けるとそこには黒服の男たちがずらっと並びパソコンを操作していた。


「ただいまー!」


「「「おかえりなさいませ!珠姫様!」」」

一糸乱れずに立ち上がり直立不動になる男たちは壮観であった。

「お疲れ様、みんな仕事に戻って〜」

ここは星ノ宮神社にある妖怪組合。人と妖が共に住めるように陰陽省と協力してできた組織である。この桜庭市が妖の街と言われるのは共存がうまくいった街の一つだからだ。そして、ここ星ノ宮神社には現世と隠世を繋ぐ門が置かれていて、そこを守る役目も負っている。

今日は組合長の酒呑童子に呼ばれてきたのだ。

早速、奥の執務室の扉を開ける。

「来たわよ〜酒呑、って酒くさ!」

「ようやっとお出ましだな、鬼神夫妻。呼び出した件についてなんだが、まぁ、単刀直入に言おう。神崎さんの件だ。」


「透の?というか、何よその酒杯さかずきは!朝っぱらから何升飲んでるのよ!」


どでかい酒杯を机にドンと置くと酒呑童子が吠える!

「こんなの飲まずにやってられっか!毎日毎日、珠姫、珠姫と群がってくる妖どもを追い返して街中で暴れるアホどもをしばき倒して、違法商売を検挙して、今度は珠姫に男ができてひと騒動だ。」


「なんか、ごめんなさい……」


「まぁ良い。お前絡みはいつものことだ。ところで、こっそり逃げようとしてる神崎さん、あんた常世で何した?」


珠代の後ろに大人しくしていると思ったら、スゥーっと目を逸らす鬼神に堪忍袋の緒が切れる3秒前な酒呑童子が眼光で人が殺せそうな目で睨む。


「わかった!わかったからそんな目で見ないでくれ。常世で何をしたかだろう?俺の嫁に手を出そうとしてた闇之崇神がいたからぶっ飛ばした。その後こっちにきた。」


自棄になったように話し出した鬼神だったが、酒呑童子の冷ややかな眼差しからそれだけではないようだ。


「神崎さん、あんた、常世の棺に眠る闇之王に随分と貸しがあるんじゃないですか?世界の隔たりに大穴ぶち開けて常世に深淵が流れ込んでやばかったとか苦情が来てるんですよ。闇之王からは「今すぐ戻ってこい!責任とって妾の婿になれ!」だそうですよ。」


「チッ!あの女狐のやつ、俺に付き纏ってきて面倒だったからあと千年はこちらに構ってる暇もないくらいにかき混ぜたってのに、もう立て直してきやがったか。」


「へー、そんなことしてたのね。」

宗一郎の背後から紅い霊力がほとばしる!

鬼神は滴る程の冷や汗をかく!

「ねぇ、宗一郎さん?」

笑顔なのに笑ってない目でにっこりとこちらに微笑む鬼嫁に鬼神はガクブルになる。

「常世では楽しくやっていたのね?それで?闇ちゃんと何をしてたのか詳しく聞かせてね?」


「「ヒィッ!」」

鬼神と酒呑童子は濃密な霊気に死を幻想させるほどの迫力にもはや戦意喪失していた。


やはり鬼嫁は強いのだ!そう、怒らせれば世界が終わるくらいにっ!

怒り狂う彼女には神々すらも避けて通るくらいには恐れられている。

ちなみに、神盟の誓約書はご機嫌を損ねた阿呆な神が七福神に土下座して頼み込んで作ってもらったものだった。


「それじゃあ、常世まで謝りに行くわよ。酒呑、扉を繋いで!」


「いや、珠姫様聞いたでしょ?今常世は深淵が流れ込んでる。普通の人間や弱い妖では行けば真っ先に飲み込まれて二度と戻って来れなくなる。扉を開いてこっちにまで深淵が流れ込んだら止めれるのは大嶽丸のジジイくらいだ。悪いが開けることはできません」


「そう、妖怪郵便が送れるのなら闇ちゃん宛に書くから送って頂戴。」


「まぁそれくらいなら構いませんよ。それで、郵便を送ってどうされるので?」


「もちろん、宗一朗さんに責任を持って常世の修理をしてもらうのよ。宗一郎さんなら1日あれば直せるからね!」


「1日⁉︎ ちょっと待って、珠姫。僕にもできることと、できないことがあるんだよ?流石にむr「つべこべ言わずにやりなさい」…了解であります。」

まさしく鬼嫁の所業。珠姫は怒らせてはならない。男たちは全会一致の教訓を得た。

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