二話来ちゃった、てへっ☆

………どうしてこうなった?



「ねぇ、どういう事か、説明してくれるよね?珠代ちゃん」

物凄く可愛い笑顔なのに目が怖い⁉︎


「えっとね、凛ちゃん。神崎君は幼馴染で、ずいぶんと前から連絡も取れてなかったの。それで今日、久し振りに再開したの」


「許嫁のくだりの方は?」

「それは親同士の決め事です」

「そうなの?本当にそれだけ?」

訝しげな視線で迫ってくる藤宮に気圧されるが、このまま押し通す!

そうは問屋がおろさないと言わんばかりにいつからそこにいたのか透がごく自然と珠代の後ろから頭をぽんぽんっと撫でる。


「僕のお姫様は酷いなぁ。一晩中一緒に愛を囁いた仲じゃないか!僕のことはって呼んでくれてたじゃないか?それとも、だったかな?」

クラス中が黄色い悲鳴と怨嗟の呪詛で溢れ返った。

若干一名程「やらかし過ぎですよ鬼神様〜」と頭を抱えている大嶽丸の孫がいたが誰にも気が付かれない不憫さだ。

そこで一時限目を告げるチャイムと共に教師が入ってくる。

「ほら、お前ら席につけ〜」

助かった〜いつもは退屈な授業だけど今日は感謝ね。

さて、四時限目の終了をお知らせするチャイムと共に私はクラスメイトに囲まれた。


「「「さぁ、キリキリと吐いて貰おうか(います)!」」」


「ははは、ナンのことかワカラないナ」

乾いた笑いと片言の棒読み台詞で答えるもダメだったらしい。

「惚けても無駄ですよ!」

「さて、まずは、転校生とはどんな関係なの!?お姫様旦那様呼びってなに?!」

授業中ずっと考えてた言い訳誤魔化し集の出番だ!

「それは、神崎くんとは幼馴染で、よくある小さい頃特有の結婚しましょ!ってやつです。」

「それで一晩中愛をって言うのは?」

「それも小さい頃にホラー映画見たあと怖かったから一緒に夜布団並べて寝ただけよ。」

すごい私!スラスラと嘘並べてる!このままいけるわよね?

そう考えた私を呪いたい。この一級フラグ建築士!

そう、私はクラスメイトに気を取られ、爆弾を放り込んだ元凶を忘れていた。

「珠代、寂しいこと言うなよ。つい先日愛してる、大好きって抱き締めあったじゃないか!あのキスは嘘だったのかい!?」

ニヤニヤと大袈裟に嘆いてみせる透に霊力解放しそうになるが、青筋一本立てて目が笑ってない笑顔で宗一郎の腕を掴むと廊下の端に連れ出して壁ドンする。


「透くん?あんまりお痛が過ぎると食べちゃうからね?」

全力の威圧を目に込めて笑顔で顔を近づける。



ちゅっ


私の頭は真っ白になって、思考を放棄する。

(っえ?ええ⁉︎ええエェェェ!!なに⁉︎なにが起きてって)


透が顔を耳元に寄せて周りには聞こえない声で囁く

「そんなに可愛い顔を寄せられたら我慢できないじゃないか。愛しの鬼嫁様」


顔に火がつく、とはこのことだと顔を真っ赤にして私はあわあわと右往左往する。

私は責めるのはいいけど責められるのは弱いのだ。


「それじゃあ、早退して我が家に連れ込んじゃおうかな?」

私ははっとして本来の目的を思い出す。危うく流されるところだった。

「って!私は怒ってるんですぅ!あなたが私と再会して嬉しいのはわかるけれど、今の生活を崩さないようにあなたともう一度歩みたいの!」


透は真面目な顔になって私と向き合ってくれた。


「だから!もう少しだけ抑えて?あなたは人と違う時を生きてきた。長い長い時を私ともう一度出会う為に使ってくれた。でもね?今生の私は人として生を受けた。なら、私を殺した彼らは何を考え、何を思って私たちと戦う道を選んだのか知りたい。」


「だが、人は百も生きればその命を散らしてしまう。わたしには瞬きの如き時しか無いのだ。だからこの一瞬すら尊い。」

私は一枚の古びた和紙を取り出す。


「分かってる。これは私の我儘でもあるの。お嫁さんの小さな我儘くらい二つ返事で聞いてくれるのが良い旦那様よね?それに、

『私、天澄珠代の名において神崎透と結婚することを神盟の血を持って契約す。また、生を終えた時、天澄珠代の魂は神崎透のものとし、未来永劫寄り添うことを誓う。いにしえの神々七福神の加護により、この約定を違える時は消滅するものとする。』これで私たちは永遠に一緒。」

古びた和紙は七福神に頼み込んで貰った神命の誓約書。神々の力がこもった、誰にも破ることはできない契約書なのである。

私の血判を押して、透の指に画鋲でチクッと刺して血判を勝手に押す。

「これで私はあなたのものよ!ほかにヤキモチ焼きな旦那様は何を望むの?」


「まったく、昔から珠姫には敵わないな。全ては御心のままに。それで、この状況どうする?すごい数の野次馬だけど?」


「アッ!?やっちゃったー!」


その日から壁ドンが流行った。とだけ言っておこう。二人の顔は真っ赤である。

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