転校生は旦那様!?

一話転校生

ブーッブーッ!

ぱちっと目が覚めて傍らに置いてあったスマホのアラームを止める。


見慣れたボロアパートの天井に見慣れた自分の部屋。しかし、今朝は少しだけ寂しさを感じる。旦那様と過ごした前世の屋敷を思い出してしまったから。


昨夜の百鬼夜行で、やっと旦那様に会えたのだ。色々思い出してしまうのは仕方がないだろう。少しの間感慨にふけって、気持ちを切り替える。

んーっ!と背伸びをして朝の身支度をサクッと済ませて両親の仏壇に手を合わせる。


「今日も学校行ってくるねお父さん、お母さん」


珠代は中学生の時に事故で両親を亡くした。両親の親戚筋の叔父さんと名乗る人に引き取られたが、これがまさかの酒呑童子組合長だったのだ、書類一切を偽造したらしいが、よく陰陽省に見つからなかったものだ。


それからはこのボロアパート『さくら荘』に住んでいる。もっとも、住民は珠代を除いてみんな妖怪なので、近所からは妖怪アパートなんて呼ばれてる。もちろん、普通の人に妖怪なんて見えないし、彼らも人に化けているので、アパートがどれだけボロいのかがわかるというものだ。まぁ、霊力をうっかり漏らしてしまう事が幾度かあったため、妖達の溜まり場になってしまったこともあるのでなんとも言えない。


そもそも、なぜ私が珠姫とバレたのかは両親の事故に由来する。

私が部活に行っている合間に両親は旅行に行っていた。その道中、悪妖と化した妖怪に襲われて車ごと谷へ転落し帰らぬ人となったのだ。転落した車のドライブレコーダーに銀狼の妖がくっきりと映っていた。

これに際して、あやかし絡みの事件として警察ではなく、陰陽省が捜査に乗り出したが、件の銀狼は発見出来なかった。


そして、被害者の遺族である珠代は妖怪組合に丸投げされて組合で保護された所、妖が見えることがバレ、うろついてた高位妖怪に絡まれてうっかり霊力を全力解放してしまい集まってきた妖の中に千年前に面倒を見てた子達がいて見つかりと、芋づる式にバレてしまった。


それからトントン拍子にあれこれ決まり、今のさくら荘に住むこととなった。



私は学校に着くといつも校舎やグランドなんかが壊れてたり荒らされてたりしないかを確認してしまう。夜中に妖達が暴れたり、宴会してそのまま散らかしていたりすることがあるからだ。

まぁ、最近は地獄組組長大嶽丸の孫である獄門 煉がいるので、不届き者は少なくなっている。

「今日も大丈夫そうね。教室に戻って寝ますか。」


教室に戻ってくると、いつもの通り自分の席の机の中がラブレターでいっぱいになっており、机の上まで溢れている。よくやるものだ。これじゃ寝れない。

本当に面倒で嫌になる。私の旦那は宗一郎様だけだというのに。

それにしても、クラスの女子達がそわそわしている。今日は何かあったかな?

席についてラブレターを処理しながら、クラスメイトにして黒髪ストレートでthe大和撫子の藤宮ふじみや りんに聞いてみる。

「ねえ凛ちゃん、なんだかクラスのみんな落ち着きがないみたいだけど、何かあったの?」


「それがね、うちのクラスに急遽転校生が来るそうなのよ。しかも物凄いイケメンらしくって、みんなそわそわしてるみたい」


「転校生?まだ入学して一ヶ月のこの時期になんて、何か訳ありかな?」

それからはたわいもない話をして時間を潰しているとチャイムが鳴って夜鳴先生が入ってきた。


「はいはい、席について下さい。今日は転校生を紹介します。入ってきて下さい。」

ガラガラッと扉を開けて入ってきたのは黒髪で高めの身長に細身でとても整った顔をしている。教室が静まり返った次の瞬間、

きゃー!カッコいい!なにあれなにあれ!?

と黄色い悲鳴が校舎中に響き渡った。


かく言う私は顎が外れそうなほど驚いて固まっていた。とても見覚えのある顔だったから。

なんで!?なんでこんなところにいるの!?


旦那様!!??



「本日よりお世話になります。神崎 透と言います。親の仕事の都合で京都から来ました。あ、それと天澄 珠代さんの許嫁です!宜しくお願いします」


———なんですとぉーー!!


本日の桜高校は阿鼻叫喚の地獄絵図だったとだけ記しておこう。

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