五話百鬼夜行
陽気な音色を奏でる和楽器に飲めや歌えの大宴会。古き時代は街を練り歩いたものだが、現代の百鬼夜行は妖怪大宴会と姿を変えていた。桜庭市にある鬼門は
この狭間は結界により安定化させ、宴会場やらなんやらを作っている。現代の住みにくいあやかし達の拠り所になっている。
「さあさあ!飲めや歌え、今宵の宴はこれからぞ!」
「ウヒャヒャヒャ!元気そうだのう」
「アヒャヒャヒャ!そちこそ嫁さんに尻に敷かれてるそうじゃないか」
年に一度の馬鹿騒ぎ。
あちらこちらで昔を懐かしんでいたり、
「初めまして、管狐のコンと言います。」
「初めまして、雪女のつららと申します」
出会いの場になっていた。
「あ!珠姫様〜!こっちで一緒に飲みましょうよ!」
珠代に声をかけてきたのは額から銀色に輝く一本角と熊耳を生やした美男子
「あら、久しぶりじゃない星熊童子。数年ぶりかしら。何してたの?」
「酒呑童子様の命で隠世にいる宗一郎様を探しておりました。宗一郎様はふらふらと旅をしておいでなので、なかなか捕まらず苦労致しましたが、なんとか見つけられまして。恐らく本日の百鬼夜行には参加頂けると思います。珠姫様がいらっしゃるとお伝えしましたので。」
「ごめんね〜、あの人私が死んでから向こうをふらふらと彷徨うようになっちゃたから、探すの大変だったでしょう。宗一郎様は私が転生したことは知ってるけど会いに来てくれないのよね。今日はあなたが届けてくれた手紙があるから来てくれるわよ」
珠代が楽しく談笑してそのひと時を楽しんでいた。
宴会も中盤に差し掛かった頃、それは突然の乱入者によって混沌とし出す。
ダンッバキバキ、ガシャーン!
盛大に机をひっくり返し邪魔な物は薙ぎ払う落武者の男
「オラー!珠姫出てこいや!手前の養分にしてやる。この恨み千年経とうと忘れないぞ!
まったく、面倒臭い奴が現れたものだ。私が前世殺した頼光の配下にして悪霊となり彷徨う渡辺綱。妖を一方的に悪と決めつけ
「あなたは空気を読みなさいよ!宴をぶち壊して。せっかく『春日』の蕎麦出すところだったのに、どうするのよこれ。さっさと貴方には消えてもらうわ」
こちら目掛けて飛び出した渡辺綱に対して、珠代は霊力を解放して血を一滴散らすとそこから妖刀が姿を現す。妖刀『紅桜』珠姫の持つ最強の刀。
刀を掴むのと刀を振り下ろすのは同時だった。火花を散らして刀が交差する。
「クヒヒッ、ようやくお前を殺せる。」
渡辺綱が押し込むのに合わせて表面を滑らせるように流して逆袈裟に切り上げる。
「私は貴方をここで終わらせてあげる。闇の神がここに、この街に手を出すのなら容赦はしない!一千年の時を彷徨いし堕ちた魂よ、禊祓いて輪廻の輪に還れ」
紅の霊力が袴に姿を変える。髪が桜色に染まり額からは紅の角が二本生える
そこから一方的に切る。舞うように刀を振るい何合も打ち合わせ火花が瞬く星のように散る。
咲かせや散らせ、命の
妖刀『紅桜』が刀身から燃え上がり、火の粉は花弁となり散って行く。
渡辺綱を横一線に斬り払いその霊体を燃やし尽くす。
「此度もまた敗れるのか。何処で間違えたのだろうな」
灰となって消えてゆく渡辺綱が最後に残したのは後悔であった。
「頼光についた時からよ」
珠代はそう言うと纏っていた霊力を散らして人の姿に戻る。
「まったく、とんでもないやつを送り込んでくれたもんだわ。酒呑童子!いるんでしょ?」
周りにいたギャラリーから一人すっと出てきて目の前に跪く。
「はっ!酒呑童子御身の前に」
「夜戸那陀神に次は許さないと、私からの伝言を伝えて来なさい。」
「御意」
「あ、あとダーリンは来てるんでしょ?千年ぶりに夫婦水入らずでお話しましょうか」
妖達が震えている中ひとり歩み出す。
「本当に久し振りだね。紅の鬼神は健在なようだね。千年前の約束を果たそう。君を探して彷徨ってようやく見つけた。もう一度君に恋をしよう」
珠代は抱き着く。もう離さないというかのように千年の時を超えて巡り合った片割れに愛しさの全てをぶつける。
「もう貴方を離さないわ。あなたは私だけのものなのだから」
「君だけのものであろうと誓わされて千年君に首ったけだよ」
「今世もいつ久しく末永く私を愛してね」
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