第6話 もう一度
「先輩!」
「なんだよ琴音。」
「いやこの呼び方懐かしいなと思って!」
「まぁ確かにな。」
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あの偶然の出会いから俺の人生は変わった。そしてあの後も様々な体験をした。
登山、ボルダリング、キャンプ等を時々学校をサボりながら。そして偶には彼女を説得して土日に。
そんな俺はもちろん学校推薦では大学に進学できなかったが、そもそも勉強は苦手では無かったので1番近くの国立大学に入学した。
大学1年になった俺は高3の琴音とはあまり遊べないなと思っていた。だが、彼女は去年と変わらずサボり続けていた。
勉強はしている姿は見た事がなかった。なので、2人の会話に琴音の進路の話は出てこなかった。
そして、その年の3月。
「お前と色んな所に出かけるのもこれからは少なくなるな。」
「え?どうしてですか?」
「琴音も大学に通うだろうし、物理的距離も遠くなるだろう。俺は実家から通っているが、琴音はそうは行かないだろう?」
「あーそうゆうことですか。」
「あんまり聞いたこと無かったが、琴音はどこの大学に進学するんだ?」
「先輩と同じ大学に合格しました!」
あぁ。忘れていた。そういえば、こいつ頭良いんだった。
「先輩、またよろしくお願いします!」
「·····」
「なので、今日は大学案内してください!」
急展開にも程があった。
大学に入学してからは、どちらもバイトをするようになり俺が車の免許も取ったため、かなり遊びの範囲も広まった。
高校よりも自由度が高いので琴音が大学に入学してからは彼女との時間が増えたのは明白だった。
半年たった頃、ふと気になって琴音に聞いた。
「そういえば、なんでこの大学を選んだんだ?」
彼女は当然のような顔でこう答えた。
「先輩がいたからですよ。」
「俺の事好きすぎだろ!」
俺は冗談で言ったつもりだった。
「·····はい。·····だから好きなんです。」
「え?」
「·····ここまで私に付いてきてくれる人今までいませんでした。私、色んな事に興味があって、でもすぐ飽きちゃって、みんなを置いてっちゃうんです。だから、どんな事でも一緒にやってくれる人初めてだったんです·····!」
「·····そうだったのか。」
「かなで先輩の気持ちも聞かせてください。」
「…まぁそうだな。·····俺は琴音と出会うまでは、つまんない高校生活だったよ。でも、琴音と出会ってからは世界が変わって見えた。世界にまだ、こんなに楽しい事があるなんて思わなかった。」
「あれ?もしかして結構私たちお似合いだったんですかね?」
「かもな。」
「俺、人に想いを伝えるのは苦手なんだ。·····でも、聞いてくれるか?」
「·····はい。」
「ちなみにストレートな言葉の方が私は好きです!」
「おい!今までのエモい空気が台無しになるようなことを言うなよ!」
まったく。
「…琴音、好きだ。付き合ってくれ。」
「はい。喜んで!」
~~~
そして今日、結婚式前夜。
あの偶然の出会いから約10年だ。
琴音の身体には新たな命が宿っている。
「ところでかなでさん。」
「なんだ?」
「この子供が産まれて大きくなったら出会ってから2人で巡った所をまたもう1度巡りましょうよ!」
「楽しそうだな!」
「今から計画を立てましょう!」
「そうだな!」
「結構時間かかりそうですね。寝るの遅くなりそうですし、明日サボります?」
「絶対ダメに決まってるだろ!!」
「はーい。」
結局、明日の朝が早いのであまり予定は決まらなかった。
でも、最初に行く所は決まっていた。
それは琴音と初めて行ったあのバンジージャンプだ。
授業サボって出会った可愛い後輩のおかげで人生が変わるはずが無い 枯れ尾花 @nonokajt
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