第5話 相談する2人

古典の先生の授業は眠くなるほどつまらなかったが、クラスメイトはこれが今日の最後の授業だと自分に言い聞かせ踏ん張っているようにみえた。


チャイムが鳴り先生が教室から出ていくと一気に教室が活気づいた。ホームルームも終わりいつもだったらまっすぐ帰るのだが、今日は行かなければならない場所があった。


学校を出て15分、その場所は住宅街の中にあった。


外観はオシャレだったが、中に入ると内装はもっとオシャレだった。どうやら、西洋をイメージしているらしい。


「せんぱーい、遅かったですね。」


お店には客が1人しかいなかった。


俺はその客の前方に座った。そして目を合わせた。


笹倉琴音だ。


今日は先日のバンジージャンプのお金のお礼をするために彼女の行きつけの店で俺がご馳走する事になっていた。


「あぁ。急いではないな。」


「なんでですか!!全力を尽くしてきてくださいよ!」


「こんなオシャレなカフェに汗だくで来る方が迷惑だろ!」


「まぁいいですよ!先輩はどれ頼みます?」


「ささ·····琴音と同じのでいいよ。」


「分かりました!か・な・で先輩!」


注文を終えると、すぐ2つのセットが運ばれてきた。


琴音が選んだのは、どうやら少し高めのシンプルなコーヒーとケーキのセットだった。


琴音はすぐにフォークを持つと、ケーキを口に運んだ。とびきりの笑顔なので味は相当美味しいだろう。楽しみだ。


「ところで、先輩次は何をしたいですか?」


「ん?あー、ってまたサボるのか?」


「あの平日の空気感がいいんじゃないですか!分かってないですね!」


「多分、一般的に見て分かってないのは琴音の方だと思うが。」


「じゃあ、先輩は来ないんですか?」


この質問の答えはもう俺の中で決まっていた。


「いや、行くよ。」


俺はあの1日が高校生活の中で1番楽しかった。

あの非日常の世界や空気感に俺も当てられてしまったのだ。


「先輩ってやっぱツンデレですか??」


「違うわ!」


「まーいいです!先輩といるのは少しだけ楽しいので!」


彼女がニマニマと笑った。


「まぁ、その少しがとてもになるように頑張るよ。」


「はい!期待してます!」


彼女の笑顔が眩しすぎて俺も頬が緩みそうになった。だから俺はコーヒーを急いで飲み干した。



やはり苦かったが、まだ心の中はほんのり甘かった。













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