第4話 近づく2人
「先輩どうでした?」
帰りの電車の中、彼女はそう聞いてきた。
「めちゃくちゃ怖かったよ。」
「私もです!本当に終わってからの足の震えが止まらなかったですもん!でも、楽しかったですよね!」
「あぁ。まぁな。」
「もう1回行きたいですよね!」
「後、50年くらいは遠慮したいな。」
今日で寿命が縮んでそこまで生きれないかもしれないが。
「えーもう、けちですね!かなで先輩!」
「笹倉はすごいな。俺は楽しさより恐怖が勝ったよ!」
彼女がキョトンとした顔をしていた。
「あれ?名前で呼んでいいんですか?」
「·····まぁな。·····一緒に飛んだ仲だしな。」
「あれ!もしかして·····先輩ってツンデレ?」
「違うわ。」
「じゃあ私のことも琴音って呼んでください!」
「いやそれは·····」
「一緒に飛んだ仲ですよね!か・な・で先輩!」
やられたな。
「·····2人の時だけだぞ。」
「まぁしょうがないですね!ふわぁー、ちょっと眠いので乗り換えの駅に着いたら起こしてください。」
「あー分かったよ。」
そう言ってから5分ほどでほどで琴音は寝てしまった。かなり疲れていたのだろう。
寝顔を見るのは失礼だから、窓を見よう。そう思った時に琴音が寄りかかってきた。
琴音から目を離せなかった。綺麗なショートカットの髪型がそして端正に整った顔に釘付けになってしまった。
俺のこのドキドキを知らずに彼女は寝たままだ。
窓を見るとそこからは外の風景を駅の乗り換えまで見ていた。このままじゃ心臓が持たないと思ったから。
~~~~
地元の最寄り駅に帰ってくる頃には夕方になっていた。
「送っていくよ。」
「大丈夫ですよ!」
「いや、夜も近いし何かあったら危険だ。」
「それもそうですね!じゃあお願いします!」
彼女の家はここから15分ほどで歩いたところにあるらしかった。
その途中、彼女が近くの公園で足を止めた。
「先輩、あれ猫が木の上で降りられなくなってませんか?」
「本当か!?全然見えないな。」
「私、視力いいんです!どっちも2.0あります!」
なんというか想像通りだな。
近づくと本当に猫が木の上で留まっていた。しかもかなり高い木である。
「登って助けるしかないな。」
「かなで先輩、木登りの実力は?」
「あまり得意じゃないが苦手ではないくらいかな。」
「ぱっとしませんね!」
「辛辣だな!」
彼女が無駄口を叩いている間に俺は木に登り始めた。そして1分かけて猫の元まで辿り着いた。
「よーしもう怖くないからなー。」
俺は猫を抱えて降りようとしたが、木が結構な高さである事に気づいた。両手は塞がってるのでジャンプするしかない。
「かなで先輩大丈夫ですか?」
「あぁ。大丈夫じゃないし怖いよ。でも」
「バンジージャンプよりは怖くない。」
俺は飛んだ。まさか1日2回も飛ぶことにはなると思わなかった。
飛んでる途中少しバランスは崩したが、綺麗に着地する事が出来た。猫も無事だ。
すると猫は俺の手からすぐに離れ飛び出した。その先には母親と思わしき猫の姿があった。
「ふー良かった良かった。」
「先輩」
琴音が近づいてきた。
「ん、なんだ?」
「かっこよかったですよ!」
不意打ちすぎて彼女の顔を直視出来なかった。
「·····言ってろ。·····それより帰るぞ。」
「はーい!」
俺は今日、学校を初めてサボった。
「先輩、次何やりたいですか?」
「またサボるのか?土日で良くないか?」
「分かってないですねー!平日のこの空気がいいんじゃないですか!」
そして、可愛い後輩に出会った。
「次、スカイダイビングでどうですか!」
俺はふっと笑った。
「勘弁してくれ。」
彼女との関係はもう少しだけ続くかもしれない。
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