『飛行機』
空を舞い、山を飛び越え、雲の上すらも飛ぶ、その乗り物。
今では気軽に乗れて、目的地が例え遠い海の向こうでも、僕らを運んでくれる
――それが、飛行機。
この世界の2022年を生きる皆さんであれば、よくご存じでしょう。
しかし、僕らが住むこの世界でも
人が空を飛ぶ事がまだ絵空事で、夢の中の話だと笑われる時代が実在しました……
この作品は、まだ飛行機が世に存在しない、ある世界の、とある時代に生れた主人公が
文字通り「ゼロから」空を目指す物語です。
でも、いきなり飛行機は作れません。
お金、人材、工業力——すべてが何もない状態から始まります。
お約束の転生スキル?
ご安心ください。ばっちりありません!w
知識と情熱、たゆまぬ努力と積み重ねる工夫によって踏み出される一歩、また一歩。
この物語は、この「一歩」の先に空が待っていると信じて進む主人公と
その主人公と共に歩む仲間を見守る素晴らしい作品です。
(しかも、作り上げた飛行機が美しく見事に空を飛ぶのです・・・!サイコー!)
是非、ご覧下さい(*'▽')
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ちょっと長くなって恐縮ですが、もう一つテーマがあります。
それは
「この世界にまだ無いものを作って、世に送り出す」
という【モノ作り】に焦点を当てた壮大な物語を、同時に堪能することが出来ます!
これは物語の中だけの話ではありません。我々の世界でも日々起きている本当の事なのです。
この世にある全ての「製品と呼ばれるモノ」
スマホ、パソコン、車、自転車、そこに使われてるタイヤ、プラスチックに至るまで――!
そのすべてが「誰か」が「情熱と知識とその全て」を投じて作り上げた
凄いモノなのです。
そう、我々は「誰かが作った凄いモノ」に囲まれて生きているのです。
これらが作られるには
素材選び、設計、試作、組立、試験、改良、量産、クレーム対応、改善(実際にはもっとある)という凄まじいプロセスを経て、これらを乗り越えたモノが「製品」となって我々の手元に在ります。
この「製品を作る」という到底一般では目に触れる事すらない、設計者、製造者の努力と苦悩と有り余る情熱を素晴らしい筆力で描かれるのが、本作の揺るぎない魅力の一つです!
◇ ◇ ◇ ◇
アツく語る余りに長くなってしまい、本当に申し訳ありません。
飛行機に乗る、という物語なら数多ある中でも
「ゼロから飛行機を作り、これに乗って空を飛ぶ」
この視点から綴られる本作は【飛行機のすべて】というサブタイトルを付けても何の遜色もない、素晴らしい作品です!!!!
是非!
あなたも!
共感して下さい!(*'▽')
自動車から原付、そこから人材を確保して飛行機開発に繋げるという地に足のついた展開で、文章もわかりやすく表現されています。その開発過程で起こる問題について、意外性がありつつも腑に落ちる解決策で徐々に完成に近付いていくストーリー展開が、スクロールする手を加速させます。
異世界ファンタジーは現実逃避とする意見もありますが、この小説は現実に還った時に何かエネルギーをもらえる様な作品だと感じました。
(某監督も仰っていたアレです)
余談ですが、個人的に模造品作られる側の業界で勤務しているので8話と9話に関しては他人事とは思えず、拝読する際に思いきり感情移入してしまいました。