両の掌ですくえる水の量と心

水道から流れる水に

両の掌で掬い上げる

この時に、いつもいつも

小さいな、この手

と、思う

顔を洗うのに充分な水量なのに

掌にたまる量は少なく見えた

それは手が小さいから

それとも一杯にしようと

手を窄めるから

から目が少ないと言う


隙間なくしても指の間から零れてく

すべて受け止められないから

小さく小さくためていく


大切にしていると思うのに

最後は心許なく

寂しく思った


顔を洗う、口をゆすぐ

何一つ変わらない


しかし

こんなに小さかった?

切なさがたまる

昔はこんなんだった?

切なさがたまる


零れているだけで

壊れていないことを何度でも思い続けた

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一日一編集『臙脂に染まる』 朶骸なくす @sagamisayrow

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