代理ちゃん

@dangomushi_fuji

果たして何者なのかこいつは

どうも。

団田佳子と申します。

いきなりなんですけど最近の悩みというか気になっている事というかまぁそんな事があるので少し聞いていただければなと思います。


この前なんかよく分からない路地の雑貨屋でダンゴムシを模したヘアピンを買ったんですよ。

安かったし。ちょっとデザイン気に入ったので。

そうしたら変な声が聞こえるようになってしまいまして。

最近仕事が忙しかったし疲れて幻聴でも聞こえてるんだろうと数日は無視してたんです。

でもねぇ、まーだ聞こえるんですよね。

嫌だなぁ、怖いなぁなんて思っていたらですね?あ、ここはcv稲川淳二でお願いします。


で、あれ何の話だっけ。


あ、そうそうその件のヘアピンをなくしちゃったんですよ。昨晩ね。

んでまぁ今日はちょっと出かける用事があってさっき帰宅したっていう話です。オチが無いね。


「まじどこやったっけあれまじで……」

玄関のカギを閉め、部屋へと向かう。

ぶつくさと愚痴を呟きながら一応廊下も探しながら自室へ向かうが当然落ちている訳も無い。

「はぁだる。まじで」

部屋の戸に手をかけてそれなりの勢いで開け放つ。

「さーて……?」

机に目をやると。

『やぁ』

なんかいる。

やけにしゃがれた声で挨拶してきた。

「なんだこいつ」

口から咄嗟に出てきた一言を聞いたそいつは足元にあったノートとシャーペンで文字を書き始めた。

『いきなりなんだこいつとはなんだ。殺すぞ』

……やけに口が悪い。PTAが聞いたら頭の血管が千切れるんじゃないか。

しかも常に顔ににっこりマークが張り付いている。とんでもなく不気味だ。

「えっと……ごめんなさい……?」

なんか怒ってるっぽいので一応謝ると、なんだか満足そうにうなずいたので多分気を良くしたんだろう。

「え、どちら様ですか」

いそいそとペンを持ち出した。自我はあるっぽいけど喋れはしないらしい。

『お前のヘアピン』

「……はい?」

ヘアピン?失くした奴?こいつが?

いや確かにダンゴムシっぽいフォルムはしているけど普通ヘアピンは二足歩行しないし自我を持っていない。

やっぱり疲れで頭がおかしくなってしまったのか。

「……寝るか」

一旦無視して眠りにつこうとすると

殴られた。


グーパンで。なんか手が生えてる。

『まだお話が終わってないでしょうがよぉ』

「いや普通のヘアピンは自我なんて持ってないから幻覚かなんかだって疑うでしょ普通」

『お前の常識がこの世の常識と思うなよクソガキ』

……やっぱり口が悪い。

とりあえず殴られて痛いという事は幻覚じゃないらしい。

あとクソガキって……一応今年で成人するぞこっちは。

「まぁいいや……アンタ……お前……呼び方が分かんねぇな。人じゃないし」

『気軽にダンゴムシ様って呼んでいいよ』

「あほか」

『あほじゃないですぅダンゴムシですぅ』

やけに煽ってきやがるなこいつ。

「お前がヘアピンだって言うなら今すぐ売りとばしにでも行くか」

『すみませんでしたそれだけはご勘弁をお代官様』

脅すと一転して腰が低くなる。調子のいいやつだな。

「……冗談だし僕はお代官様じゃない」

『ではご主人様と……』

「変な呼び方付けんなお前」

『ウス』

さて、どうしたものか。

突然ヘアピンが自我を持ち始めて、なんか手が生えて、文通でコミュニケーションが取れる……。

まずい。考えれば考えるほど訳が分からな

「後ろでくねくねするんじゃありません!気が散るでしょうが!」

さっきから視界の端でくねくねしてる奴がウザすぎる。

なんか敬礼してるし。

「はぁぁぁぁぁぁぁ……」

思わず大きなため息が出てくる。

「そういえばヘアピンの形に戻れんの君」

確認しそびれていた。

『なれるよ』

ノートにそれだけ書くと、机の上に小さな煙と共に失くしたヘアピンが現れた。

どうやら本当にヘアピンだったらしい。

「……寝るか」

分かったこと一に対して謎が百くらい生まれた気がした。

とりあえず詳しいことは明日考えるとして今日は眠りに着くことにする。


ここまで一連の流れを見て訳が分からなかったそこの君。

安心してくれ。僕も分からないから。

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