最終話 追う者たち

「ユウトさん!敵が撤退して行きます!」

「おおおお!」

 ゴブリンキングのビーンを失ったゴブリン軍は、元々優勢だった中央と囮作戦により包囲されていた右翼、そして穴の空いた左翼と、総崩れになって行き、敵のゴブリン達が撤退して行きます。

 おそらく丘陵地帯の拠点を目指しているのでしょう。


 僕も死ぬものと思っていた囮部隊はより歓喜に包まれています。


 セドナによると、残った部隊のうち機動力と体力のある部隊で追撃を行うとの話です。


「みなさん!もうひと頑張りです!敵のゴブリン達を追撃し、掃討します!」

 そう言って戦闘を走ります。デスペナルティの体が重いです。


「ユウト君。僕のゴーレムを使いたまえ。返さなくても良いから」

 そう言ったのは<アカデミー>ギルドマスターのぬるぽさんです。


「ではお言葉に甘えて」

 ぬるぽさんのゴーレムは、戦車の下半分のようなものでした。

 キャタピラの上には台があり、その上には操縦用の石があります。


 たしか補給品を運んでいたはずの物です。

 乗り心地はクソですがありがたいです。


 100メートルほど後ろに500人くらいがついてきています。

 残りのゴブリンも500体ぐらいなので、問題はどれだけ被害を抑えられるかです。

 …おや?


「ゴ、ゴブ!ゴブブ!」

 比較的大柄なゴブリンが、単身立ち塞いでいます。

 しょうがない。


「こいよ雑魚」

 いけません。戦闘の後だから本来の言葉遣いが出ています。

 ギルドマスターは信用商売ですから。常に気をつけていなければ。


 しかし困りましたね。デスペナルティと疲労で剣をまともに持てません。

 なので肩に構えます。危険ですので真似しないでください。


 多少の睨み合い


「ゴブ!」

「はあ!」

 ゴブリンの木剣による袈裟斬りを、剣ごと粉砕します。


「グバア」

 一歩間違えれば攻撃をノーガードで食らっていましたが、成功しました。


 そして後続とも合流します。


「ユウト!なに先に行ってるんだ!」

「ハルカ〜。ごめんね。それとお疲れ様」

「まったく」

 桐谷さんに向こうを任せてきたそうです。


「それじゃ、行きましょうか」



 ゴブリン達の拠点


「グ…ブ…!」

 逃げ帰ってきたゴブリン達は静まり返っていた。

 多大な犠牲を出しながらも100人足らずが帰還すると、拠点が全て燃えていたからだ。


ビュン!

「ゴ…」


「さあみなさん。こいつらで最後です!」

 わーっと人間の群れが流れ込んで来る。

 こうして、西の草原ことチンジュ草原の東部は魔物の手から解放された。

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