第3話 星空の下で

「今日もお星さまがきれい~!」

「そうだね」

 ボクが草むらに寝転がって星空を見上げると、隣に座るネアが、かすかに笑った気配がした。

「お日さまキラキラも好きだけど、夜のお星さまのキラキラも好きー!」

 見上げていると、なんだかボク自身も吸い込まれてしまいそう。毎日見てるはずなんだけど、今日はトクベツにきれいな気がする。なんでだろう? あ、そっか。ボクは昼間のことを思い出して納得した。

「なんだか今日は嬉しそうだね」

 そういうネアの声もとても嬉しそうだった。

「だってネアがボクの帽子を見つけてくれたから!  ボク、もうほんとに見つからないかと思って……すごく悲しかったんだ」

 思い出しただけでも、その時の悲しさがよみがえってきて、自然とまゆげが下がりそうになる。

「帽子、見つかってよかったね」

 思わず暗い気持ちを思い出しそうになったボクの耳に、ネアの優しい声が差し込まれる。それだけでボクの心に浮かんだ黒いもやは、一瞬で吹き飛ばされてしまう。

「うんっ! ネア! ありがとう! 大好き!!」

 ボクが勢いよく起き上がって言うと、ネアは目をまんまるにしたあと、

「ど……どういたしまして……」

 と、消え入りそうな声でつぶやいて、ふいっと視線をそらしてしまった。

「ボクね、ずっとずーっと、ネアと一緒にいられたらいいなあ~って、あらためて思っちゃった!」

 えへへ、さすがにちょっと照れくさいかも。でも思ったことは思った時に言わないと! ボクはきっと生まれた時からずっとネアと一緒だけど、でもそれが、この後もずっと続くかどうかは誰にもわからないでしょ? だから……今この瞬間を大事にしたいんだ。今日見上げたお星さま達だって、明日も全く変わらないとは限らないもの。

「マル」

 気づけばネアが、真剣な顔でこっちを見ていた。そういえばネアの声って、ここの夜の空気みたい。静かだけど、そっと寄り添って包み込んでくれるような、すごく優しい声。

「ぼくも、ずっとマルのそばにいたい」

「ほんと!? じゃあボクたちずっと一緒だね!」

「うん」

 うなずいて、ふわりと笑うネアは、今まで見たことないくらいキラキラ輝いて見えた。お星さまにも全然負けてないくらい。ボクは胸がぽかぽかとあたたかくなって、思わず笑顔になるのを止められなかった。明日もその先もずっとこんな日が続いたらいいなあ。そう思いながら、草の匂いの混じった夜の空気を目いっぱい吸い込んで、ボクは目を閉じた。まぶたの裏に残るお星さまのかがやきと一緒に眠ったら、今夜は素敵な夢が見られそうな気がした。

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マルとネア ~2人の天使のお話~ なしろ @nashirouta

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