朝起きると布団の中に俺の姫が潜り込んでいました
椀戸 カヤ
幸せな朝
チャッチャラリー、チャラリラー
チャッチャラリー、チャラリラー
枕元のスマホのアラームを止め、俺はもう一度布団を被り直した。ふと背中側が暖かいことに気づく。少し仰向けに傾くと、柔らかな感触で、俺は慌てて元の横向きの姿勢に戻る。
な、なんだ?この感触は、たまきか?どうして俺の布団の中にたまきがいるんだ?昨日の夜、ちゃんと家に帰るところを見届けて、鍵もかけてたのに、朝になって俺の布団の中にいるなんて。
昨日の夜はたまきが俺の部屋ですごくはしゃいでいたのを覚えている。俺の充電中のノートパソコンを触りそうになっていた時は冷や汗をかいた。たまきと電気製品は相性がすこぶる悪い。以前もスマホの充電器をダメにされ、今のはスマホ自体も新しくなってワイヤレス充電を使っている。邪魔なところに置いた俺も悪かったが、咄嗟に「待て!」と叫んで、焦って取り上げたのだった。
あのことを俺が怒っているとでも思ったのだろうか?だからこんな朝早くからこっそり布団に潜り込んだ?うーん、あり得るな。たまきは突拍子もないことをよくやるから、俺はいつも驚かされる。でもそんなところも可愛くて、いつも甘やかしてしまう。
たまきは布団の中に潜り込んで眠ってしまっているようだ。かすかに鼻息が聞こえる。彼女の寝顔が見たくなって、俺は体勢を変えようとモゾモゾ動いた。っと危ない、押しつぶさないように、起こさないように、慎重に。
布団をそーっと持ち上げ、たまきの様子を伺う。いつもはぱっちりと開いている目を閉じ、まつ毛が帷を下ろしている。小さな鼻がプスプスと鳴っているのはご愛嬌。ふわふわのほっぺが片方押しつぶされている。ぐっすり眠っている彼女の頭をそーっと撫でる。たまきは柔らかな毛質で、撫でる方も至福のひとときだ。ぎゅっと頭に顔を埋めると、甘い匂いがする。
顔を上げ再びたまきを見ると、気がついたようでまんまるの黒目がこちらを見つめていた。
「たまきちゃん、起きちゃった?ごめんねぇ。あったかくって布団の中気持ちよかったよね?でも勝手にゲージから出てきたらダメじゃない、それに俺が押しつぶしちゃったらどうするの?んぁー!あくび……かわいいなぁたまきちゃんは……!」
すっかり目が覚めた様子のたまきは、体を起こして伸びをしながらあくびを一つした。存在感のある前歯の奥に、チラリと覗くモチモチの舌がまた可愛いのだ。当のたまきは期待のこもった目でこちらを見ている。
「あー、もしかしてご飯でちゅか?ペレット全部食べちゃった?はっ、新しく買ったチモシーがお気に召さなかったのかな?」
俺は布団を跳ねのけて、素早くうさぎ用のペットフードを準備する。
明日からは鍵を二重にかけなきゃな、と考えながら。
だって俺の大事なお姫様だから、しっかり閉じ込めておかないとね!
朝起きると布団の中に俺の姫が潜り込んでいました 椀戸 カヤ @kaya_A3_want
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます