第2話初デート
From 伊織
今日は二人で出掛ける約束をした日だ。
昨日はもちろんながらあまり寝られてない。
この二週間の間にお互いの様々な事を話をしてLINEも交換した。転入初日よりも仲は深まったと思う。桜と話すのはなぜか楽しい。
駅前に集合で僕は十分前には着いたが、
さくらは先に着いていた。
さくらはピンクのワンピースを着ていた。割と予想通りではあるがもちろんながら可愛い。
肌は透き通っていて透明感のお手本という感じだ。僕がさくらに見とれていると
「あ、伊織君!」さくらは笑顔で手を振ってきた。
「遅くなってごめんね。行こう。」集合時間には間に合ったが一応謝っておいた。
「うん!行こ!!」今日のさくらはいつもよりテンションが高い気がする。
僕は行き先も伝えられないままさくらに言われるがままに電車に乗った。
「ねぇ。さくら、なんでさくらが転入してきてこんなすぐに二人で出かけるの?」前もこんなことを聞いた気がしたが改めて確認した。
「だからー伊織君の写真愛に惹かれたからだよ?それに今週末が桜の満開なの!」
「で、桜を見にどこまで行くの?そろそろ行き先が知りたいんだけど。」
「行き先は富士山!!」「ここ福岡だよ。」
さすがに進学校だから福岡に富士山がないことくらい知っている。というか小学生でもそんなこと知っている。
「さすがに伊織君でも富士山の位置くらい知ってるんだ……」完全にさくらは僕をからかっている。「で、どこなの?」
「秘密だよ。でもとっておきの場所だよ。」
とっておきと言われると楽しみになる人間の心理はなんなのだろう。
そして三十分ほど電車に乗って隣の市についてさくらは降りた。なんだかそこは懐かしい気がした。
「ここはね。私が前の学校にいた時に住んでた町なんだよ。」「そーなんだ。」
「なんでそんな棒読みなのよ。ひどいな〜伊織君は」
さくらは泣いた演技をしていたのでそれも無視して駅を出た。そしてさくらの歩く方向について行った。山のようなところを少し登ると広くて辺り一面芝生の広がる広場があった。
辺りは日が落ちようとしている。
そこは周りに満開の桜が咲いていた。
「やっと着いた〜!」はしゃぐさくらと桜の木がとても美しくて綺麗だった。
「景色。どうかな?伊織君」さくらは突然こっちを振り返って聞いてきた。僕は思ったことを正直に伝えたいと思った。
「あぁ。すごく綺麗だね。さくらも」
「桜もってなによ。桜を見に来たんでしょ!」僕は雨宮さくらに綺麗だと伝えたつもりだったが桜は桜の木が綺麗と捉えたらしい。
僕なりに勇気をだしてさくらに伝えたのだが。訂正するのも恥ずかしいからやめておく。
「伊織君、約束通り私とこの景色の写真撮ってよ!」
「うん、撮らせて」桜の木に見とれて写真を撮るのを忘れていたので桜の木の景色を何枚か撮った後、さくらと桜の木のツーショットを撮った。
なんだかこのツーショットが懐かしい気がした。
「伊織君!写真見せて!」僕は写真を見せた
自分的にも上手く撮れたんではないかと思う。「どうかな?」
「伊織君上手だね!私という素材を上手く使ってるね〜」さくらは満足そうだ。
僕はせっかくだから写真を撮った。どこを見渡しても満開の桜で心が綺麗になった気がした。さくらも写真をインスタに上げたりしていたから会話もなく写真を撮ることに集中できた。十五分くらいたっただろうか。さくらはいきなり僕の方を見た。
「伊織君さ授業中私の事よく見てるよね」さくらはいきなり笑いながら言った。
「み、みてないよ!」僕は焦りながら言った。
「うそだ。みてるでしょ?」この人には嘘が付けないと思った。「たまに見てる、かも。」「認めてくれたね。なんで見てるの?」さくらは終始ニコニコしている。いや、ニヤニヤしている。
「いや、それはその、、、君が、さくらが輝いてるから。出会ってまだほんと少しだけどさくらを見てると生きていて毎日を過ごすっていう当たり前なことを誰よりも楽しんでいるように見えたから。そこが僕が見てる一番の理由かな。」でもさくらには言わないけどさくらを見ると同時に自分とは全然違う景色の中で生きているんだろうなとも思って自分が少し情けなくなったりする。
「そう思ってくれててありがとう、すごく嬉しいよ。」さくらは微笑んでそう言った。そのままさくらは続けた。「伊織君、桜の花言葉って何か知ってる?」さくらは唐突に話を変えた。「わからない。」「桜の花言葉はね、あなたに微笑むって言う意味があるの、そこから私のさくらって言う名前も付けられたんだ。ひらがなの理由はひらがなの方が優しい印象があるからみんなに春の陽気を当てられるようにって意味なんだって」
「今のさくらに似てる。それに僕の初恋の人に似てる。」つい思ったことを口にしてしまった。
「え?初恋の人?どんな子だったの?」さくらは不思議そうに聞いてきた。
「僕の初恋の人も今を大事に生きようとしていて毎日輝いて見えたんだ。その子といると日常のありふれた毎日も楽しい毎日に変わってすごく幸せな気分だったんだ。その子は僕以外にもきっとみんなに優しくて幸せをみんなに与えてるんだと思うよ。」
「へぇー伊織君は私を初恋の人に照らし合わせて見てくれてるんだ。嬉しいな」さくらは笑いかけて僕にそう言ってきた。
「さくらにとって僕はどんな人に見えるの」
「どんなふうに見えているか聞かれるとよくわかんないけど、私は伊織君のことは大切な人だと思ってるよ。」「大切な人?」大切な人ということがよくわからなかった。
「うん。そうだよ。伊織君は私に生きる意味を教えてくれたと私は思ってるんだ。」
「こんな短期間で?」よくわからなかった。まだ会って一ヶ月もしてないのに生きる意味なんて大事なものをさくらみたいな周りからいくらでも人がよってくるような人に与えられたのかと不思議に思った。
「伊織君。人の気持ちを動かすのは時間じゃないんだよ?人は例え一週間でも気持ちは変わるんだよ。私がこれまで与えてきた幸せなんて一日で超えるくらいの幸せを与えられるんだよ」さくらの言葉は優しかった。僕は入院してた小学校の頃を思い出した。あの子は今どこで何をしているんだろうと思うと会いたいと思った。急に切なくなったこの胸にある気持ちをいつまで一人で抱えなければならないのだろうか。
「伊織君、今一番私に伝えたいことってなに?」さくらはいきなり僕にそう聞いてきた。自然とさくらのその優しい声に僕は飲まれていた。
「生きているかもわからない人に会いたいと思うのっておかしいかな。」
自分でもよくわからない質問をしていた。
自分がこの質問をされたらきっと答えることなんてできないと思う。でもさくらはゆっくりと包み込むような声で答えてくれた。
「なにもおかしくないよ。人の終わりってね、死んだ時じゃなくてみんなに忘れられた時だと思うの」さくらはとても真面目にでもどこか悲しそうな顔でそう言った。
「忘れられた時、、、」「うん。だから伊織君はその子のこと忘れなくていいんだよ。その子は伊織君にきっとずっと覚えていてほしいから。」さくらは今にも消えてしまいそうな優しい声でそう言った。僕はその言葉を聞いたら今まであの子の事を早く忘れなければいけないという思いから解放された気がした。そんな思いと共にさくらはそっとこっちへ近づいてきて僕を抱きしめた。
「さ、、くら?」
「私は今もこれからも伊織君の大切で輝いてる人になりたい。私の事をずっと忘れないでほしい。」さくらはなぜか涙混じりの声だった。その時僕は理解した。一番心に引っかかっていた正体だった。最後のピースがピッタリとハマったようなそんな感覚だった。この人だ。と僕の心がそう言った。
「忘れるわけないよ。僕の初恋は小学五年生の頃に少し風をこじらせて入院してた時があって、その時に一人の病気の女の子が僕と同じ病室にきたんだ。名前は最後まで聞けなかったけどその子がさっき言ったように凄く輝いていてその子といると今までにない幸せな気持ちだった。だけどその子は今いるのかわからない。」
「、、、っ」さくらは何か言いたげな様子だったけど僕は話を続けた。
「さっきのさくらの言葉がやっとわかった。今日まで気づけなくてごめん。もう僕が君を忘れることがなくていいと分かった。それに、もうこれから先も一緒にいたら忘れる必要もない。」僕は一度深呼吸した。そして
「雨宮 さくらさん、僕の初恋実らせてくれないかな。」辺りはすっかり暗くなり桜だけが月に照らされて光っていた。淡いピンクのカーテンのようだ。
「なんで、わかったの、、?」さくらは泣きながら僕に聞いてきた。
「さくらの優しい声、胸が苦しくなるくらい可愛い笑顔、その純粋な瞳。何年越しでも思い出せた。そのくらい僕にとって輝いていたんだ。僕にとってもすごく、すごく大切な人なんだ。」そういってさくらの方を見るとさくらも深呼吸した。涙をとめようとしていたが全然とまっていない。「ありがとう伊織君。私ね、伊織君のおかげで頑張れたんだよ。さっき伝えたように伊織君が私に生きる意味を教えてくれたんだよ。だから、伊織君の初恋を私にちょうだい、そして私の初恋も実らせてね!」僕は涙が溢れ出た。その涙が嬉しいからなのかはよく分からないけどとにかく涙が溢れた。さくらはそんな僕をもう一度抱きしめてくれた。「待たせてごめんねさくら。」
「本当だよ!待たせすぎだよ!!」そう言うさくらを見るとさくらは今までで一番可愛い笑顔で泣いていた。
桜色の笑顔 @myoodo
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