窮鳥

向き合っても答えは出ないし、逃げようとしても逃げきれない、追いつかれる、忘れさせてくれない。

何をしていても、していなくてもずっと頭の中でぐるぐると回り続けているのです。

あぁ、消えてしまいたい。

目標に向かって走っている時、「お前なんか何をやっても無駄だ」響き渡る。

足を止めた時、「だからお前はだめなんだよ」掻き鳴らされる。

再度走り出そうとした時、「お前のことなんか誰も見ていない」叩きつけられる。

繰り返す、巻き返す、引き返す。

どうして私の人生にそこまで口を出すのかな、教えてください。

人の声なんて気にしない、私は私、他なんてどうでもいい。

わかっている、わかっているのに脳裏を過る。

いつまでもどこまでも、私を離してくれない。

抱きついている、縛りつけている、こべりついている、離してくれない。

向けられた言葉はあんなにも冷たく、私を突き放したのに。

どんなに頑張っても、どんなにあがいても、前に進めない。

でも、うしろには戻りたくないんだ、もう嫌なんだ。

全力なのに、必死なのに、一生懸命今日も一日を、一分を、一秒を生きているのに

私はずっと、長い間、一歩も前に進めていない

取り残されている、孤独。


一人でいるのが好きなんです。

誰も私を認知していない空間が心地いいんです。

友だちなんていらない、傷つけられるだけ、刺されるだけ。

私は一人で生きていけます、これがいいんです。

比べられることなく、貶されることなく、静かに生きたいんです。

でもなんだか物足りない、空っぽ、寂しい、虚しい、矛盾、撞着、背馳。

進めないし向き合えないし受け入れられもしない。

突き放して逃げて更に落ち込む、卑しい。

しかし、私が悪いのか、とふと考えてしまうのです。

本当にすべて私が悪いのですか

この生きづらさもこの考え方も、この見た目も、この声も、この頭も、この過去も、この傷も全て私が、拙劣だから、愚かだからなのですか。

他責

正しい生き方、正しい受けとめかた、正しい逃げかた、正しい忘れかた、誰も教えてくれませんでした。

皆、言葉を投げて、手をあげて、一方的に好きなことをして何事もなかったかのように消えていきました。手のひらを返しました。

さんざん馬鹿にしておいて、勝手に期待して失望して、比較して、利用して、流行りものの玩具のように捨てました。

逆に、どう生きればよかったのですか。

ことばを全て受け止めて変わればよかったのですか。皆の求める私になればよかったのですか、私の意思は関係ないのですか。言われた通り死んでおけばよかったのですか、全て忘れてしまえばよかったのですか。

貴方の謝罪は嘘だったのですか。あの笑顔も涙も全て偽物だったのですか、なかったことにしたいのですか。

それすらも苦しい、私を悩ませる。

本当にすべて私が悪いのかもしれない、と。

全て私の夢、妄想であって実際には何も起こっていないのかもしれない。

自身の思い込みによってこんな生き方をする羽目になってしまったのですかね。

公共交通機関を利用できないのも、大きな声を出されると動けなくなるのも、夜眠れないのも、朝起きられないのも、消えてしまいたいと思ってしまうのも、自分を好きになれないのも、あの人に傷つけられたのも……。

全て私のせい、自業自得なんですかね。

助けてと言ったら楽になれたのでしょうか、

助けを求めた先に何があるのでしょうか。

そもそも誰が私なんかを助けてくれたのか。

毎日楽しそうでいいよねなどと言えるやつらに、助けを求めればよかったのですか

人に悩みを、苦しみをうち明けたら楽になれるのでしょうか、救われるのでしょうか。

話したとて傷は、記憶は消えないし、無駄じゃないですか。

趣味を作るといい、外に出るといい、人と話すといい

まるで大発明家のように言いますけど、まるでどれも試していないかのように言いますけど、やったんですよね、何度も。

何も得ることなく、自分は本当につまらない人なのだと実感させられました。

好きだった本を読もうにも内容は入ってこないし、テレビは情報が多くて疲れる。音楽は頭に響いて痛いし、散歩は手足が痛んでできない。

何もないんです、自分を憎む以外にできることがないのです。

話した先に、何もないのです。

自分を嫌うのではなく、過去を受け入れ自分も受け入れ、愛してみようと思いました。しかし、できませんでした。考えれば考えるほど私は愛するに値しない人間だと感じてしまうのです。

自分を愛そうとしている時点でもう自分のことを愛している、と言われたことがあります。

自分を愛しているのなら、好いているのなら、こんな傷だらけではないだろうしきちんと寝れているはずなんですよね。

人は役に立たない、人に頼れない、人になれない。

今日も私は繰り返す、できもしないのに、入懐。

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短編集 夜が明けるまで、 かなむ @nns2s2

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