その2
特にトラブルもなく、順調に仕事が終わった。
久々定時に終わったので、いつもより足取りが軽く家路へ急ぐ。春になってきたので、日が伸びた為、いつもより空も明るい。
いや…こんな日は寄り道もいいかもしれない。
近くの本屋さんに寄って、今話題になっている小説を一冊手に取りレジへ向かう。
雑誌コーナーのゼ〇シィに目を向けたが、自分には必要ないものだと実感し、ため息が出た。
別に、いますぐ結婚したいとかそういうわけではない。
ただ、結婚した友人たちはSNS上でキラキラして見えた。
仕事を頑張っている自分もほかの人から見たらキラキラして見えるのかもしれないが、実際には繁忙期なんて目にクマつけて多分…いや、酷い顔して仕事している。
最近流行りのカフェもあまり行かないし、どこかのお洒落なイタリアンのお店とか今どきの人達が行くようななBarもいかない。
というか高い…。
SNSにのせるような素敵な写真も撮っていないため、日に日にSNSへの投稿も減っていってる。今は専ら見る専門。
別に今の生活に不満があるわけではないが、このまま30代、40代になり
もしも独りだったら…と思うと焦りもでるわけで・・・。
でも何をどう変化したらいいかもわからず、変わらない生活を続けている。
私だって、世間的にはまだまだ『若者』のはず。
きっと大丈夫…と思いながらゼ○シィを横目にレジへと向かった。
今日は家で買った小説をゆっくり読みたいから、スーパーに寄ってお惣菜を買って夕ご飯を簡単に済ませる。ラーメンも食べたいけど、この間食べたばかりで体重も気になるところ、適当に買い物を済ませてお店をでる。
帰りの電車に揺られ、最寄り駅へ着きあとは家へ向かって歩くだけ。その時、
「あーおなかすいたー。」
はっきりと聞こえた渋め男の人の声。しかしそこに人はいない。
どこかの家の窓でも空いているのか…。
「おい、そこの女。」
また聞こえた同じ声、あたりを見渡すが、やはり誰もいない。
怖くなってきて、自然早歩きになる。
「え、ちょっとまてコラ!!!」
誰かにつけられているが、誰もいない。怖すぎて思わず走る。
やっとマンションに着いた。あれでもこういう時家に直接向かわないほうがいいのかも…と青ざめる。
「ちょっと…ま…まて小娘…ハァ…。」
追いつかれた?!しかしやはり人はいなかった。
三毛猫が一匹。
ん?…猫?
気ままなキミ 樹蜜 @na_suke_
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