僕らの境界

夏伐

僕らの境界

 大きな音を立てて、地面が塗り固められていく。


 そこは元々、少し薄暗い林だった。


 僕らはそこでよく遊んでいたのだが、不審者が出るという噂が流れ、しばらくすると整地されることになったのだ。


 その林の持ち主に、何度も連絡をした人がいるらしい。


――きちんと土地の管理をしてください!


 そのような連絡が何人もの人間に繰り返された。土地の持ち主は、林を更地にして、さらには一面をコンクリートで固めたそうだ。


 少し前まで青々としたくるぶし丈の草が一面に生い茂っていた。そこには今は固いコンクリートとそれを丁寧に平にしていくロードローラーがあった。


 僕は何とも言えない気持ちで、残念とも便利になるから嬉しいとも、そのどちらも混ざった感情でそれを見つめていた。

 少しだけ残念な気持ちの方が買っていた。


「おい、何してんだ?」


 僕が林だった所を見つめていると、悪友が話しかけてきた。


「ここはもう遊べないから、隣町に面白そうな所見つけたんだよ。廃工場があるんだってさ」


「うん」


 悪友の誘いに乗って、僕は自転車に飛び乗る。


 季節はもう秋になる。最後に見た林は夏の姿だった。


 僕は既に記憶の彼方へいってしまいそうな林の姿を名残惜しく思い返す。


 今、肌寒く秋を生きようとする僕らと夏で時間の止まったあの林、いつの間にこんなにも差が出来てしまったのだろう。


 うす暗くてしんとした空気が好きだった。木の作り出す影が地面に落ちて、時折キラキラと輝く太陽の輝きがとても大きく見えた。


 あの林はもうない。


 僕らはそれを夏に置いてきてしまった。

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