第34話 閑話:分岐点
「ま、街は、ほぼ
兵士は顔面の半分に酷い火傷を負い、清潔とは言えない白い布で顔を半分隠していた。彼の熱で変色した革鎧が
街が壊滅とは、その軍勢が失われたことを意味する。
報告する兵の
謁見の間につめる臣下達にざわめきが、走った。
王は、国交のない
兵士は三つ目の街の生き残りだった。伝令として、街を離れかけたその時、空からの赤い火の玉が視界に入り、
精霊信仰は邪教と信じる国に、精霊信仰の厚い国からやってきた使いの獣は3度不幸を運んできたのだ。
その獣は四通目の信書を持ってきていた。
カスト王は、臣下が恭しく差し出したエトゥール王の信書を読まずに破り捨てた。
「陛下!!」
「読むに値せんな」
「しかし――っ!」
王は
「なんたる邪教の侵略だ」
司教が顔色を失い、ブツブツと口の中で祈りの言葉をつぶやく。
その言葉が混乱に火をつけた。
「エトゥールの陰謀だ!これを機に侵略をしてくるに違いない」
「星を落としたのもエトゥールか?」
「ありうる」
「だが、
「警告に従い、民を避難させるべきか?!」
「馬鹿な!エトゥールの思うツボだ」
「くだらん。実にくだらん」
王の発言に、場は凍った。
男は玉座から立ち上がると、剣を抜いた。その剣先は、火傷を負いかろうじて、意識を保っている下級兵士の
混乱の元凶は消すべきだった。
「どうやら、錯乱して幻を見たようだな」
「お待ちください、陛下」
狂王が兵士を切り捨てようとした時、静かな制止の言葉が入った。軍服姿の隻眼の初老の男が、すすみでた。
「
「……ふむ、一理あるな。よかろう」
王は将軍に対して、軽く片手をふり、許可した。男はすかさず部下に目線で合図し、重症の下級兵を引き取らせた。
目標を失い手持ち
「おお、エトゥール王に返事をせねば、ならないな」
カスト王は、楽しそうに笑った。
「メレ・エトゥール!!」
「お兄様っ!!」
ファーレンシアとシルビアが同時に悲鳴をあげた。
セオディア・メレ・エトゥールが首と胸を押さえ、体勢をくずした。彼は衝撃と苦痛に油汗をかき、顔をゆがめた。すぐにシルビアが、その手首を掴み、脈を確認し、
カイルは咄嗟に、メレ・エトゥールに対して
突然のエトゥール王の異変の原因は、トゥーラの長く悲しみに満ちた狼にた遠吠えで裏付けされた。
「……使いに出したウールヴェが殺されました」
「……どこの国?」
カイルは質問したが、見当はついていた。シルビアは震える声で答えた。
「……カストです」
セオディア・メレ・エトゥールは、使役しているウールヴェを失った苦痛の中、
「やってくれる……精霊の温情を踏にじるとは、
セオディア・メレ・エトゥールの静かな
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